第11話:お龍をアイドルにしてモチベをデバッグするぜよ!
「サトウ……志士たちが、みんな暗い顔をしちゅう。これじゃあ、日本の起動の前に、みんな心がサーバーダウンしてしまうぜよ」
京都の海援隊アジト。坂本龍馬は、試作中の**『リョーマ・エナジー v0.8(喉越し安定版)』**を喉に流し込み、ガチガチと歯を鳴らしながら呟いた。
今回のv0.8は、サトウが柑橘類の皮から抽出した香料を絶妙にブレンドし、あの『赤い缶』特有の「ケミカルな爽快感」を幕末の素材だけで再現した自信作だ。
「人間の精神は、過酷なタスク(倒幕)ばかりでは摩耗します。必要なのは、脳をリフレッシュさせる『エンタメ』という名のパッチです」
サトウは、三味線を手に不満げな顔をしていたお龍を振り返った。
「お龍さん。あなたのその天性の魅力と歌声を、一部の人間だけじゃなく、日本中の『ユーザー』に届けましょう。……プロデュース(最適化)させていただきます」
サトウがまず着手したのは、**『竹製サイリウム』**の実装だった。
竹の中に、サトウが調合した「摩擦で発光する化学物質」を封じ込め、振ると怪しくも美しい光を放つ棒。
「坂本さん。この光の点滅を特定の周期で振ることで、群衆の脳内に多幸感を誘発し、組織のエンゲージメント(団結力)を高めます。これを『推し活』と定義します」
「……おまん、また妙なことを。けんど、お龍が光り輝く舞台に立つなら、わし……エナドリをケース買いして最前列で応援するぜよ!」
数日後。京都の河原に特設されたステージ。
そこには、サトウが設計した「反射鏡によるスポットライト」を浴び、現代的な意匠を加えた着物を纏ったお龍の姿があった。
「――皆様、お待たせしました。幕末の不具合を歌で流す、『ORYO』のライブ、開始です!」
サトウの拡声器から大音量の三味線ロックが流れ出すと、河原を埋め尽くした志士たちが、一斉に竹製サイリウムを振り始めた。
「「「おーりょー! おーりょー!!」」」
最前列では、龍馬がv0.8をガブ飲みして目を血走らせながら、誰よりも高く竹を振っている。
「これぜよ! この熱量! 倒幕なんて、これに比べれば小さなデバッグなぜよー!」
お龍がサトウ直伝の「ウインク(物理的魅了コマンド)」を放つたび、志士たちのストレス値は激減し、代わりに強烈なやる気が充填されていく。
サトウは舞台袖で、志士たちの表情が「最適化」されていくのを冷静にモニターしていた。
「……よし。これでモチベーションの不具合は解消されました。坂本さん、ライブが終わったらそのまま薩長軍の合同演習に移行しますよ」
「おう! 今のわしなら、エナドリと、お龍の笑顔があれば……地球の裏側までデバッグしに行けるぜよ!」
こうして、幕末に「アイドル」と「ペンライト」が実装された。
志士たちは皆、お龍の「推し」になることで、死を恐れぬ最強のシステムへとアップデートされたのである。
○○大百科:幕末初アイドル『ORYO』
**ORYO**とは、サトウがプロデュースした幕末初のアイドルであり、日本における「推し活」の始祖である。
概要
サトウが「志士のメンタルヘルス改善」を目的に結成。
楽曲は三味線に重低音を加えた「幕末ロック」が中心で、歌詞には「デバッグ」「仕様変更」などのサトウ語が散りばめられていた。
竹製サイリウム
サトウが開発した使い捨て発光デバイス。
ライブ終了後、興奮した志士たちがこれを振り回しながら戦場に突撃したため、敵方からは「光る棒を持つ狂戦士の集団」として恐れられた。
エナドリの進化
v0.8(喉越し安定版)。
味が現代の『リョーマ・エナジー』にほぼ到達。
龍馬はこの時期、ライブのコール(声出し)で喉を枯らすのを防ぐため、この汁でうがいをしていたという。




