早速仕込み開始!
———とはいえ、明日まで時間があるとなるとどうなるのかって……?
「うっめぇ!なんだ、この味は!」
「うふふふ〜、まだいっぱいあるわよ〜」
「お母さん、お肉焼けたよー!」
「遥さんや、焼きおにぎりもあった気がするが?」
「シチュー出来ましたよ〜!取りに来てくださーい!」
「こっちパン無くなった!父さん、お好み焼きまだ?」
「焼きそばがないのが惜しい……!もうちょっとだ!」
……まあ、あの緊迫感はどこ行った?って感じの現在のデーヴィの拠点の大広間の一室。
あの後、デーヴィがとりあえずと言って連れてきてくれたスラムにいた獣人さん達、約7名。
全員が元村人でもなかったけど、それでもとりあえず腹が減っては話も出来ねえって事で、許可を貰ってまた炊き出しを再開したんだよ。
母さんと凛はバーベキューコンロをマジックリュックから出して肉や野菜を焼く傍ら、何故か鉄板を出してお好み焼きを作りだす父さん。
爺ちゃんはまったりデーヴィと酒を酌み交わしながらつまみを催促し、ゼファさんは元村人と涙を流して語りあっているし。
更に、マーチさんとナラちゃんはみんなの配膳に勤しみ、ディグレンさんとヤレンさんは入り口に集まって来る奴らを牽制すると言う……なかなかにカオスな状況が出来上がっているんだ。
ん?俺は何をしているのかって?
壁際に陣取ってスワイ君と一緒にもう二人の獣人の状況を確認中。
「……で、二人は冒険者孤児でスラムに逃げ込んで来て協力して生活してきたって事か」
「ケッ、お前みてえな苦労した事もねえ奴に何がわかるっていうんだ!」
「情報をやったんだ、メシよこせ!」
「ほれ。母さん特製のシチューでも食え。……で、スワイ君よ。睨んでやるなって。焼き鳥でも食べて機嫌直せ?」
「ムグッ!」
俺と同じ年代くらい(とはいえ背だけは俺より高い)の猫獣人と豹獣人の二人をずっと警戒中のスワイ君。
焼き鳥を口に突っ込ませ、とりあえず大人しくして貰っているけど……俺に突っかかってくる二人にイライラしてんだよなぁ。
いや、でもさあ……二人の気持ちもわかるんだよ。
だってどうやって此処に連れて来られたかっていうと、有無を言わさず連れて来られたみたいなんだよ。
で、この二人の場合どうやら仲間を庇って連れて来られたらしいんだ。逃すのが精一杯だったって言ってたし。
そりゃそうか。スラムの奴らが丁寧な対応するわけねえし。俺達が用があるってだけで捕獲されたようなもんだし。
と、出来るだけ大人の対応をしているんだけどさあ。
「サッサと俺達を帰せ!」
「来てやったんだ!メシくらい持って帰らせろ!」
フシャー!って感じで警戒されまくっているもんだから、俺もお手上げ。
仕方ないからグルル……!と威嚇するスワイ君を引っ張って爺ちゃんの側に移動したんだ。
「洸、お疲れだったな」
「爺ちゃん、見ていたんだったら助けろよ。俺思いっきり侮られてたの気付いてたんだろう?」
ヨッと爺ちゃんの隣に胡座をかき不貞腐れる俺。爺ちゃんはガハハハハッと笑っては酒を口にするし。
「良いか、洸。目的を履き違えちゃいかん。俺達の目的はこの街の獣人全員の救出じゃない。あくまでもゼファ達の元村人達の救出だ」
「わかっているけどさ。だって同じくらいの奴らなら気になるじゃん」
「まあなぁ、洸は幸せに育って来たから余裕があるんだろうが、その日暮らしの奴らってのは自分達の事でいっぱいいっぱいなんだろ。なにしろデーヴィが此処に居るだけでも恐怖だろうて」
「あ、そっか。だからゼファさんもかなり遠くに村人達を連れて行ったもんな」
ついでにスワイ君も呼ばれてあっちに行ってるけどさ。言われてみりゃ、デーヴィと爺ちゃんの周りには俺達以外近づいて来ないもんな。
そう思ってデーヴィを見ると、ニヤっと笑いながら酒をクイっと飲み干して美味そうにプハァなんてやってっけど。
「チョウジュウロウやお前らが珍しいんだ。俺と酒を酌み交わしてぇなんぞ、久しぶりに言われたぜ?」
「そうか。だったらまた機会を作って飲もうや。日本酒の味が分かる奴と飲み交わすのは良いもんだからなぁ」
そう言って今日の爺ちゃんのおつまみ、山アサリのバター醤油炒めを美味そうに食べるんだ。俺もちょっとツマミたくなるってもんだぜ。
そうそう、この山アサリも拠点の近くに飛んで来たんだぜ?一斉に貝に貼りつかれた時は何事!?って思ったけどさ。
勿論、拠点の結界にビタビタビタビタビタッと貼りついて来たんだからな?で、見つけた母さんが喜んじゃってさ。
「きゃあ!アサリの味がするんですって!嬉しいわぁ!酒蒸し、バター炒め、アサリの炊き込みご飯もいいわねぇ♪」
なんて鼻歌歌いながら例の如く分離させて、サッサとキッチンに戻って行ったのにはみんな乾いた笑いしか出なかったけどさ。
……原始の森ってなんでもアリかよ……ってちょっと引いたのは俺だけじゃない筈。
って、話しが逸れた。
「なあ、デーヴィさん。あの二人は帰しても良いか?」
あの調子じゃ、此処に居ても俺達にはどうしようもないもんな。
「もとより俺ぁ関係ねえよ。———おい、あの二人をツマミ出せ」
デーヴィが命令すると即座に幹部があの二人の獣人を連れ出して行ったけど、まあ文字通りツマミ出されていたから騒がしく去って行ったけどさ。
「洸……後ろ髪引かれるなら、また連れて来て貰うか?」
思わず目でその様子を見送っていた俺の様子を見て、ニヤっと笑って酒を口にする爺ちゃん。
む?俺を試してるな……?
「いいよ、もう。今回の目的は村人達の救出だし。俺も出来ない事は手を出さねえよ」
「そうか」
って、爺ちゃん!頭を撫でるなって!
「出来たぞ〜!!!本日限定繁スペシャル!」
恥ずかしがった俺が爺ちゃんの手を掴んで撫でるのをやめさせていると、出来立てほっかほかのお好み焼きを持って来た父さん。
「ほれ、洸には半熟目玉焼きをつけてやったぞ!で、酒飲みの親父達には大人のお好み焼きだ!」
「ほほう!こりゃまた美味そうな匂いだ!」
「だろう?デーヴィもわかってんなぁ。で、親父にはポン酢だろ?」
「お。繁にしては気がきくな」
俺からすれば、繁スペシャルは結構酒臭えお好み焼きだけどさ。
それにこの爺ちゃんの好きなお好み焼きには、酒と米が入ってんだ。今回はそれに父さんの好きなモツが入っているみたいだし。
俺は肉がたっぷり入ってりゃいいけどさ。あ、うめぇ。
「で?どこまで決まったんだ?」
ドカッと座る父さんがデーヴィに聞いているけど、父さんも外ズラを繕うのはやめたみたいだな。
「あ?何にも決まってねえぞ?」
マイペースにデーヴィが一口大のお好み焼きをポン酢につけて食べている。「へえ」とか言いながらも二口目に取り掛かっているって事は結構気にいったんだろう。
「おいおいおい……お前らがどう動くかによって俺達が動く事も決まってくるんだぞ?」
呆れる父さんがモツ入りお好み焼きを口に入れると、爺ちゃんが醤油を取り出してお好み焼きにかけている。
因みに、ウチの家族のマジックリュックには各自お気に入りの調味料が入っているんだ。味にはうるさいからな、坂木家は。
「繁……諦めろ。コイツは本当に何も考えておらん」
「まじか……」
モグモグしながらも唖然とする父さんと爺ちゃん。雰囲気が重くなって来たから、俺はちょっと思いついてマジックリュックから魔石を取り出す。
……えっと、[思考読み取り]付与と[360度パノラマ上映]付与をかけてっと。
「ん?洸、何やっているんだ?」
あ、父さんにバレた。いっか、やっちゃえ。
「見てて」
俺が魔石に魔力を流すと、パアアア!!!と光り出した。おし、上手くいった!
「うわぁ〜!綺麗〜!」
「あらぁ、良いわねぇ。紅葉が見事だわ」
突然の物事に動じない我が坂木家の凛と母さんから感嘆の声が聞こえてきたが、他の人達は口を開けて惚けている。
「ほほう……面白いの。洸、これは記憶の読み取り付与でもかけたのか?」
「お、流石爺ちゃん!正解!ちょっと雰囲気変えてみようかと思ってさ。俺の記憶にある景色の再現が出来たら面白いんじゃね?と思ってやってみたら出来た」
「へえ!面白い!これは映写機みたいだが、より精密だなぁ。どれ、俺にも出来るのか?」
柔軟な思考の坂木家がワラワラと俺の周りによって来ては、魔石を持ってそれぞれが思い描いた光景を映し出して遊び出した。
母さんは三分で出来る料理の名物キャラクターが踊っているのを投影させてみんなを戦慄させていたし、凛は有名なネズミの国のパレードを投影させて母さんを喜ばせていたし。
父さんに至っては坂木家ヒストリーを思い出したのか、次々と俺達の姿が映し出されていたし……
赤ちゃんの頃の凛と子供の俺と一緒にお風呂に入っていた写真が投影された時には、凛が「恥ずかしい!」って魔石を奪い取っていたけどさ。
そんな感じで周りもこれが映像だと理解し始めた頃、爺ちゃんが何を思ったのか変なことを言い出したんだ。
「お!これは使える!」
「「「「は?」」」」
ニヤっと笑った爺ちゃんは、なんの事かわからない俺達に説明し始めたんだけど……
「爺ちゃん!それ出来っかも!」
「あー……お爺ちゃん好きだもんね」
「これはお義父さんしか出来ないわぁ」
俺と凛と母さんはノリノリだったけど、一人父さんだけは「絶対反対!!!」と最後まで頷かなかったんだよなぁ。
最終的に多数決で決まったから、父さんは青ざめていたけど。
「へえ!面白そうだな!乗った!」
なんせデーヴィまで乗り出して来たからなぁ。諦めろ、父さん。
うししし……!明日の方針が決まったぜ!そうと決まれば仕込み開始!
待ってろよ、馬鹿貴族共!絶対獣人さん達を蔑ろにした事を後悔させてやる!
アクセスありがとうございます!
こちらのストックも切れ、不定期更新とさせて頂きますm(__)m
うううう……すみません!




