まだまだ隠れていた村人達
「え!?スラムにまだ数人いたの!?」
驚きでポロっと食べていたピザトーストのかけらを落とす俺。
アレから一晩経って、世界樹一階で朝食を一緒に食べている時にゼファさんから報告を受けたんだけどさ。
「俺達は自分達だけで精一杯だったし、あっちも同じ状況だったから詳しくはわからないですが……」
ゼファさん……だから俺に敬語はやめようぜ……
なんて言っても、昨日から四人全員同じ態度だから仕方がないんだけど。
因みに、父さんや爺ちゃんは諦めたみたいだな。凛や母さんは仕方ないって最初から受け入れているし。
……俺も慣れるしかないかぁ。
あ、ジャンさん達には絶対そのままでいてくれって言ってあるぞ!もし、あの五人も同じ態度になったら寂しすぎるからな!
って悪い。話ズレた。
「それじゃ、スラムに村人が何人いるかはわからないって事だな?」
「ああ。チョウジュウロウが言う通りらしい。それぞれが孤立奮闘していたようだ。……だが、一つ問題がある」
クロワッサンを食べながら爺ちゃんがゼファさんじゃなくてジャンさんに確認したのは、昨日ジャンさんやディグレンさんやヤレンさんがあの四人と元村人同士で情報交換したからだな。
そのジャンさんも苦い表情の理由は……
「ああ、やっぱりいるんだな。スラムの元締めが」
ガーリックトーストをモグモグしながら父さんが納得しているようだけど、これって結構問題じゃね?
「ゼファ達も匿って貰う為に盗んだ金や品物を収めていたらしい」
そう思っていると、悔しそうに言うのはヤレンさん。
気持ちはわかる。だってスラムにいるだけで搾取されているんだぜ?
そんなん詐欺じゃないか!って思っても、スラムってだけで貴族が手が出せない理由もちゃんとあるんだから厄介だ。
「デーヴィの強さと容赦の無さはロックシュリーでは有名だ。だが、敵対さえしなければ奴は基本自由にさせてくれるからな」
餡バタートーストをしっかり食べ終えたディグレンさんが補足して教えてくれたけど……餡子が口についているからなんかウケる。
「ディグレンさん、口に餡子付いてるよ?」
って凛!お前が拭いてやると———
「だあああああ!ディグレン、凛から離れろ!」
ほらやっぱり。
父さんが離れた席からワチャワチャ言ってるけど、凛は気にせず笑いながらディグレンさんの口を拭いてあげている。
うーむ……とりあえず父さんに味方しといてやるか。
「凛、トーニャの口もついでに拭いてやってくれるか?源までバターでベトベトになってる」
俺の横でお気に入りのシュガートーストを食べているトーニャは、「う?」と首を傾げて俺を見るが目で合図を送って見る。
トーニャ、父さんに協力してくれ!
「リンー!トーニャも!」
通じたのかわからないが、思惑通り凛の元に走って行ったトーニャ。
凛は笑いながらトーニャを抱きしめたけど……ディグレンさん、大人げないって。俺を恨めしそうに見ないでくれ。
「そうなると、元締めさんに挨拶が必要かしらぁ?」
そんな俺達の様子を気にせずマイペースにクロックムッシュを食べている母さんが呑気な事を言い出した。
あ、そうそう。どーでも良いもしれないけど、今みんなが朝食に食べているのって母さん作パンでア・ラ・カルトなんだぜ。
まぁアラカルトって日本式に言えば、一品料理やお好み料理なんだけどさ。細かい事は気にしない母さんだからなぁ、適当に言ったんだろう。
ここでの食生活がどんなものかを理解して貰う為に、ちょっと遊んでみたんだってさ。
ケイトさんは同じくクロックムッシュを食べているけど、ゼファさん達は慣れてないから普通のサンドイッチを食べてる。
結構攻めたものを食べているのは実はジャンさん。納豆トーストがイケるって食っているんだぜ?うん、獣人の嗜好ってよくわからん。
「おそらくそれが必要になるかと……」
ゼファさんが申し訳なさそうにBLTサンドを食べて、驚いている。お!美味いだろ?凛と爺ちゃんの作った野菜と母さんのベーコン。
「動くなら俺も動きます!」
何個目かのカツサンドを手に取り、スワイ君も意欲を出してくれるけれど、即座にフルーツサンドを食べている爺ちゃんが首を振る。
「気持ちは有り難いが、スワイは力をもっとつけてからだ。ここは、元締めに顔が知られているゼファと俺と繁が行った方が良いだろう」
爺ちゃん……カッコ良く言っても口に生クリーム付いてるぞ。あ、でもそれシャインマスカットじゃん!俺もそれ食おうかな。
「って事は、次の山はデーヴィか……」
あ、ヤレンさんも気になったんだな。フルーツサンドに手が伸びてる。
「でもさ〜、俺ら金は持ってないぜ?しかも、相手の言いなりにならないようにしないと、搾取されまくりだろ?」
パクッとシャインマスカットのフルーツサンドを食べながら、俺は思った事を言う。ん〜、甘くてジューシー!!!
「何か元締めの事で情報を持ってないか?ゼファ」
エビチリサンドならぬロブスター似の魔物サンドを食べる父さんがゼファさんに聞いていると、エビ好き凛が早速母さんに頼んでいたなぁ。
「っ!!デーヴィは食に興味がないと言われていますが……その実、よく手下に美味いものを作れと怒鳴っている事を聞いた事があります」
厚焼き卵サンドを食べて、ハッと気がつくゼファさん。母さんの厚焼き卵は坂木家秘伝の味だから、そりゃ美味いだろ。
「あらぁ?なら屋台で何か料理作ろうかしら?」
スープを盛り付けながら軽ーい気持ちで言う母さんに、全員の視線が集まったんだ。「ん?なに?」って首を傾げる母さんだったけど……それ、いんじゃね?
「きっかけになるだろうな……」
「遥さんの料理ならなんでも美味いからなぁ」
「あ!だったら俺自衛の魔導具もっと作るぜ!」
「凛も手伝い出来ないかなぁ」
坂木家は閃く視点も似てんだろうな。戸惑う獣人のみんなを置いて家族でワイワイ対策を提案し初めたんだ。
「母さん、魔石ネックレス持ってたっけ?」
「ねえ、お母さん!唐揚げなんかどうかな?」
「家族で屋台か……!これも坂木家の良いメモリアルだな」
「源の散歩がてら魔物狩ってくるかな?」
乗り気になると、一挙に事が進むのも坂木家の特徴でさ。ディグレンさんやヤレンさんまでポカンとしているけど、慣れてきたジャンさんがフハッと笑って加わって来たんだ。
「ならば、顔を知られても良いな。ハルカまで出るという事は、力を存分に見せつけた方が良い。俺も護衛として出よう」
「え?ジャンさんはやばくね?って言うか、危なくなったら転移フラフープですぐ戻ってくりゃいっか」
「いずれは貴族に目をつけられる……獣人の救出は目立つからなぁ。腹を括った方が早いか」
「繁よ、拠点の守りも必要だ。洸と共に今回はしっかり防衛を固めてから行く方が良いだろう」
「あ!防衛なら凛も協力出来るよ?」
どんどんと話が進んで行く坂木家の様子に笑い出すディグレンさんとヤレンさん。
「俺達の恩人はやっぱり器が違う」
「ああ、デーヴィでは問題にならんな」
そう言って「俺達も出来る事があるか?」と加わって来た二人。
ケイトさんはトーニャを抱いて、マーチさんやナラちゃんの背中をポンポンと叩いて母さんにメニューを提案してたよ。
ゼファさんやスワイ君は俺が無理矢理話に加わらせたけどさ。
俺達家族がどこまで出来るかわからないけど……やるだけやって方向を間違えたら直せば良いって考えは皆んな同じ。
むしろ手を咥えて待っているってのが、合わないんだよなぁ。だって、全員で力を合わせれば見えて来る未来がある筈なんだ。
あ、コレ婆ちゃんがよく言ってたんだって。
だからさ……
「いっちょ、ぶちかまそうぜ!」
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