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自宅の倉庫が異世界に繋がった⁉︎〜家族全員チートで異世界セカンドライフ〜  作者: 風と空
第一章

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目指す先は……?

 「ほれ!洸!源に負けとるぞ!」


 ほっほっほっほっと軽快に俺の前を走る65歳の爺ちゃん。そしてその横を軽快に走る最近我が家に加わった柴犬、源。


 「コウ、自分のペースで行こう」


 俺の横を並走しているのは、汗一つかいていない赤犬獣人のジャンさん。……俺よりヒョロく見えるのに、体力は俺以上あるって流石は獣人としか言いようがない。


 くっそー!!!俺が1番若いっつーのに、1番体力もないとは……!かくなる上は……!


「はっはっは—— ! これなら皆、追いつけまい!!」


 ビュンッと爺ちゃん達を追い越して先に行く俺。そう、身体強化の付与を自分にかけたんだ。


 うっひょー、こりゃはぇえ!!!


 爽快感を感じつつ走っていると、ビュッと隣を駆け抜けて行く赤い影。そして、また俺と同じ速度で走るジャンさんよ……!


 「コウ、今すぐ付与を解け。じゃないと歩けなくなるぞ?」


 「へ?」


 「無理な強化は身体を痛める。さ、早く」


 ジャンさんに言われて渋々解くと……


 「いってぇえええ!!!」


 ピシッと筋肉が張ったと思ったら、ゴロゴロと転がり痛みが襲ってきた俺。


 「あーあー、こりゃ自業自得だな」


 「クゥーン?」


 呆れる爺ちゃんに、慰めてくれるのか腕を舐めてくれる源。


 源……!お前……なんて飼い主思いなんだ……!


 「洸よ。浸っている所悪いが、お前の悪い癖が出たな」


 やべ。爺ちゃんちょっと本気で怒ってるわ。


 「イデデデデデデ!!!」


 「馬鹿もんが!!ここがドーム内だから良いが、外だったらお前は魔物の餌だぞ?もっとよく考えんか!!!」


 爺ちゃんに耳を引っ張られて怒られる俺の姿に、ジャンさんは腕を組んで真剣に頷いているし。頼みの綱の源は、凛の姿を見て走って行ってしまったし。


 ……で、結局しばらく正座で朝から怒られた俺。


 えー……今更ですが、皆さんおはようございます。異世界の朝は鳥の声じゃなくて、何やら不穏な声で始まりました。


 「お兄ちゃん、自分のせいでしょう?」


 「え?俺、声に出してたか?」


 「うん。お兄ちゃん独り言結構多いよ?」


 何気に1番グサリと胸に刺さったのは、可愛いわが妹の言葉だったりする。


 そんな俺達の様子を見に来た凛は、母さんから朝ご飯ができたことを伝えに来たらしい。


 情けない事にジャンさんの肩に支えられて拠点に戻って来ると、今日はジャンさん一家もこちらで食べるらしく、ケイトさんが母さんと一緒にキッチンに立っていたんだ。


 「コー?」


 勿論トーニャも一緒で、心配そうな顔をして俺の側にトテトテ歩いて来てくれる。うおう……癒しだな、トーニャは。


 流石にトーニャに心配されたら年上としておしまいか、と思い直したところで俺の後ろから父さん登場。


「洸?わかってるな?今日は、拠点から出るの禁止だからな」


「えええ!!!」


「お兄ちゃん、今日は一緒に家の中を改善しようよ」


「凛!流石我が娘!優しいなぁ!」


「ハイハイ。入り口でコントしてないで、サッサと席について頂戴」


 凛の優しさに俺も感動していたら、呆れた顔の母さんが鍋の蓋をカーンとお玉で叩いて場を纏めたんだ。


 まぁ、坂木家では朝の風物詩だが、ジャンさんやケイトさんにとっては微笑ましい光景だったのだろう。


 二人共笑っていたけど、少し悲しげな表情で俺達家族を見ていたのは何か印象に残った。


 それを感じたのは俺だけじゃないだろうけど、あちらから言わない事には突っ込めないからなぁ……


 席に座りながらもそう思ってたら、俺の膝の上にトーニャが乗ろうとしたわけで——


「いってぇええええ!」


 まあ、当然こうなるわな。


 ってやべえ、トーニャが泣きそう……!うわあ、トーニャごめんって!!


「うわああああああん!!!」


 と結局泣かれてしまい……トーニャに拗ねられて、その日一日、トーニャから避けられまくったのにはかなり堪えた……!


 ま、まぁ、それはそれとして。


 今日は純和風の朝の食事。ご飯に味噌汁、漬物に鮭の焼き物、筑前煮と俺らにとってはなんてことない食事でも、ジャンさん達にとっては珍しい食事になるわけで。


「ジャン、どうだ?口に合うか?」


「面白い味。でも優しい、ほっとする味だと思う」


 和食派の爺ちゃんが1番心配していたらしいけど、当の本人達はけっこうパクパク食べている。


 ケイトさんは筑前煮がかなり口にあったらしいし、トーニャは鮭の焼き物がお気に入りみたいだ。味噌汁も三人共最初から受け入れてたからなぁ。


 良かった良かった、と思いながら味噌汁を飲んでいると、母さんからみんなの今日の予定を聞かれたんだ。


「私はケイトに料理を教えたいのだけど、どうかしら?」


「ハルカさん!是非お願いしたいです!」


「ふふっ、良かった。いっぱい作り置きしましょ?」


 母さんはケイトさんと料理教室かぁ。こりゃ、昼も期待できるね。


「ジャン。今日の動きを見ると結構動けそうだが、探索に加わらんか?」


 爺ちゃんは地図作成に動くらしい。これには当然父さんも一緒に動くのは決まっているが……まだヒョロっとしているジャンさんを爺ちゃんが誘うとはなぁ。


 あ!でも、朝の動きは確かに凄かったからなぁ……獣人って基礎体力が違うんだろうか?


 「出来る事なら助けになりたい。まだ体力が完全に戻ってはいないが良いだろうか?」


 「勿論だ。それに、こういう時こそ洸が役立つだろ?」


 「なんの事だよ、父さん?」


 「ほれ、ファンタジー特有のポーションだ」


 「あ、そっか。回復を付与させりゃ良いのか」


 なんてサラッと言っていたら、ガタッと立ち上がるジャンさん。


 「ポーションが作れるのか!?」


 ズイっと前のめりに聞かれた事に驚いた俺は、ちょっと仰け反りながら「う、うん」と頷く。


 「……ならば「ジャン、駄目よ」………済まない。何でもないんだ」


 ケイトさんに遮られストンと椅子に座り直し、静かに味噌汁を飲むジャンさん。


 いやいや、何でもない事はないだろうに……!


 なんて思ったのは俺だけじゃない。


「ジャンさん?誰か助けたい人でもいるの?」


 ……うん。うちの正直者の凛が聞いてしまったんだ。


「いや……気にしないでくれ」


 ジャンさんの悲しそうな笑顔に、そりゃ無理だ、と思ったのは俺だけじゃなくて父さんもだった。


「ジャン?何を隠している?いや……当てようか?……おそらく確認に行きたいのだろう?」


 父さんが言った事に驚いたジャンさんとケイトさん。こういう時って獣人はすぐわかるよなぁ。耳と尻尾がピンッってなっているんだから。


「ランブル国の端、原始の森の手前って言ってたな」


 その様子に爺ちゃんまで俺の知らない情報を出してきた。母さんを見ると、ケイトさんを抱きしめている。って事は、母さんもこの情報を知っていたんだな。


 俺達が寝た後大人同士で話しあったのか……?凛も知らない様子だったし。


 俺と凛は割り込める雰囲気じゃなかった為黙っていると、父さんがため息を吐きジャンさんに問いかける。


「ジャン。教えてくれ。もしかして、まだ村に生き残りがいるんじゃないか?」


 頑なに口を閉ざすジャンさんの袖を、クイクイッと空気を読めないトーニャが引っ張る。


「ディー?」


「トーニャ!」


 どうやら誰かの名前をトーニャは言ったらしい。慌ててトーニャを抱き上げるジャンさん。ケイトさんは「ああ……!」と顔を両手で覆っている。


 俺といえば、あ、これ来るな……!っと母さんを見る。うおっ、やっぱりすげえニコニコしてるわ……!


 「ねえ、ジャンさん?貴方にそんな顔をさせる理由はなあに?」


 「ハルカ……気に—」


 「気にしないわけないでしょお?……あのね、私達の住む地域ではこんな言葉があるの。


 『一つの釜の飯を食う仲間』って言ってね。生活を共にする親しい間柄の事を言うんだけど、いわば『戦友』、いわば『生死を共にした友』の事を指すの。


 私達がそれにあたるとは言わないわ。むしろ、ジャンさん達にとってはそれが元の村の人達に当たるんじゃないのかしら?そして、そんな人達の事は忘れられないし放っておけない。


 ——だけど、今は力がないから動けない。そう思ってたんじゃない?違うかしら?」


 母さんの言葉にグっと口を噛み締めるジャンさん。ケイトさんの顔を覆っている両手からは涙が流れているのが見える。


「ねえ、ジャンさん。私はね、責めているんじゃないわよ?それよりも悲しいの。私達はもうとっくにジャンさん達を仲間だと思っているのよ?いえ、勝手に思っているの。だから、頼られない事がすごく悲しいのよ?」


 ……母さんが優しくゆっくりと言葉を紡いで行く。ジャンさんはその言葉をしっかり聞きながらも、膝の上のトーニャの身体を更にぎゅっと抱きしめている。


 言いたくても言えないんだろうなぁ……


 俺がジャンさんの立場だったとしても、申し訳なくて頼る事が出来ないと思う。


 ……けど、ここにいるのは坂木家だ!


「よし!なら行くか!ランブル国の端に!」


「いや待て。急ぎといえども、洸達が準備したものを設置した方が都合がいいんじゃないか?」


「いや、親父。あれは勿体ない!むしろ穴だけで良いんじゃないか?もし追っ手が来ても崩せるようにしておいた方が良い。なんせ獣人の村を襲う輩がいる国だ」


「そうだよ、お爺ちゃん!そんな国にアレは使いたくないよ!でも凛木の根で洞窟を固定出来るよ!」


「俺も空気循環や結界の付与が出来る!いざとなったら付与消せば崩れるだろうし、こっちの案が良いんじゃね?」


「むぅ!お兄ちゃん、凛の邪魔するのぉ?」


「いや、楽な方法を言ってるだけだって」


「なら、二人共協力してくれた方がもっと早いぞ?ほれ、1番工事が得意な繁もいる事だしな」


「「確かに」」


「……ね?ジャンさん、ケイト。貴方達には私達がいるのよ?だから言って頂戴。『力を貸して欲しい』ってね?」


 優しくケイトさんとジャンさんの肩に触れる母さん。これには二人共の肩が震え出したんだ。


 そして小さな声でジャンさんが確かに言った。


 「力を……貸して……欲しい……!!」


 うっしゃ!やっとジャンさんが折れた!!思わず俺は凛と顔を合わせてニヤっとしつつハイタッチを交わす。


「「やった(ね)!!!」」


「うむ、よく言った!繁、早速どうするか考えんとな!」


「そうだな。急がば回れっていうし、まずは準備か!」


「あ、俺とりあえず、ポーション作るわ」


「凛は何すれば良い?」


 早速動き出す坂木家の様子に、顔を見合わせながら泣き笑いをするジャンさんとケイトさん。


 泣いているのに今度は悲しそうに見えなくて、俺は密かにホッとしたんだ。


 それに、ジャンさんに抱かれているトーニャが1番わかっていたんだろう。


 二人の頬を、小さな紅葉のような手で拭いてあげようとしていたからなぁ。


 それに、いつもなら『かまって』と言わんばかりに騒ぎ出す源も、きちんとお座りして待っていたんだよ。この姿には凛と二人で感激してさ。


 源を思いっきり構い倒してあげたのは、言うまでもないだろ?

アクセスありがとうございます♪

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