合コンでの出会い
これも歌詞が先に有っての物語というか、ほぼ同時に思いつく
https://www.youtube.com/watch?v=j4Abjh5D8Ts
何か頑張って一つでも完成させます。
「そんなんだ。それで?」
不機嫌そうな返答が返ってきて、思わず僕は正面の席の子を見つめなおす。
年齢は30代なり立てか?落ち着いてきてはいるけども、言葉のどこかに幼さが残っているような子だった。
実は、この合コンが始まって、正面に座ったその子を見た瞬間は、神に感謝したほどだった。
その受け答えを聴くまでは…
「へえ」
「そう」
何を話しても、興味なさそうな生返事しか返ってこない。
渾身の自虐ネタをかましても、最初の「そうなんだ。それで」である。
「まあそんなわけで、今はしがないサラリーマンをして」
と、言いかけた途端、彼女から強い反応が返ってきた。
お嬢様然として気取っていた彼女が、箸を勢いよく箸置きに置いたのだ。
「ウチの父も、サラリーマンですが、父をしがないとでも?」
柳眉が逆立っていた。そして、今までの我慢を奔出させるかのように続ける。
「ていうか、杜氏さん、内をびくついて周りに気を使っているんですか?
誰かのグラスが開けばすかさず作ってあげたり、唐揚げにレモンを掛けるかどうかまで気にして、私が飲まないからってビールを注ぐのも躊躇ったり、それで楽しい合コンと言えるのですか?」
周りのメンバーもちょっと引いたが、これが小瀬川涼香の常態で有るらしく、それぞれの会話に戻っていく。
「あの、それじゃ、ビールじゃなくて、別の飲み物でも如何ですか?」
杜氏 俊は、初めて会話が成り立った感動に尋ねてみる。
「呑めたら、自分で頼みますよ。まったく、気が利かない方ね。何か呑みやすいものをお勧めするとか?無いのかしら?」
散々である。まさか、推定年齢30歳過ぎで、お酒の種類も知らないことを、察すれと言われても…しかし、杜氏も大人ではあった。
「ソルティドッグとか?ジンフィズなんか、良いのではないでしょうか?」
本当は、バイオレットフィズとかを勧めたかったが、子ども扱いしていると叱られそうで、中間地点を目指したつもりであった。
奨められたものを呑みながら、涼香は「バイオレットフィズの方が、想いが籠るのに」とか呟いていたが、それがカクテル言葉の意味をいていることは、その時の杜氏にはわからなかった。
それよりも急速に呂律が回らなくなる涼香を心配になって、他の参加者に尋ねるも個人的な友人は居らず、ある漫画作品の同好サークルの付き合いばかりとわかった。
少しコーヒーでも付き合って、酔いがさめたら見送れば良いかと覚悟を決め、友人たちに場を任せ杜氏は店を出た。
「うまく、撒けましたね」
涼香は、まるで自分たちが周りから抜け出すことを目論んでいたかのように杜氏に同意を求めるが、もちろんそんな作戦も無かったし、話しかけているのは杜氏ではなく傍らの街路樹だ。えらい酒乱を任されちまったなと思い途方に暮れた、杜氏の前にスマートな車が滑り込んできた。
「お嬢様!もう、そんな姿は屋敷の外で晒してはいけないと、教えてきたはずが」
車から颯爽と降りた老人が、涼香に苦言を重ねる間、これはお迎えが来るクラスのお嬢様だったかと、杜氏は安心をして踵を返そうとした。
まあ、前方に二人の屈強な黒服が道をふさいでいて、離れることは叶わなかったのだが。
「杜氏様と言いましたか、申し訳ございませんがお嬢様がご機嫌ですので、今しばし話し相手になっていただきたく」
背後から、執事だな~と先ほど、眺めていた老人の声が聞こえ、前をふさいでいた二人が満面の笑顔を作り、車に誘導する。
(やばい、やばい、やばい。この胡散臭い笑顔が絶対ヤバイ)
人生をただで50年以上、生きてきたわけではない。
ぼったくりバーに友人のせいで入ったことも有った。何か、あの時の緊迫感みたいなものを感じて、、、、理性では感じても良いはずが、感性では全く感じない、そういえば、あの時も伝票が出てくるまでは、一歳の危機感を感じていなかったなあと、自分の感性の鈍さを恨む。
しかし、何故か平穏な気がする。後部座席の隣では、涼香がスウスウと寝息を立てているからなのか?
隣で自分もスウスウ、寝てしまえば惨劇を身に受けなくて、明日を迎えられるのでは?
変な因果関係を妄想しながら、杜氏は自然に眠りに落ちていた。
土曜日は嫁さんにAI作曲を独占されていたから、今のうち何か創作活動をしよう。




