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きみとずっと④

 翌日も水沢と一緒にパンを食べた。

「あー、また水沢と食べてる」

「うん。いいでしょ」

「な、水沢転校するってほんと?」

「……本当だ」

 仲村の友だちが寄ってくると、昨日と違って水沢も話に加わっている。でも、緊張気味に頬が強張っているし、あまり楽しそうではない。自分とふたりで話しているときとは大違いだ。

 友だちが去ると、水沢は深い息を吐き出した。

「疲れた。人と話すのは疲れる」

 首や肩を動かして、力を抜いている姿に首をかしげる。

「俺と話すのも疲れる?」

 もしそうならば、あまり話しかけないほうがいいかもしれない。若干の不安とともに水沢に問うと、相手はふいと視線を逸らした。

「……仲村は別」

「よかった」

 仲村がほっとすると、水沢は目を逸らしたまま口をもごもごと動かした。なにか言おうか言うまいか、悩んでいるように見える。

「どうしたの?」

「……」

 水沢は綺麗な形の唇を開いて閉じて、そのまま引き結んだ。小さく首を左右に振って、ひとつ息を吐き出している。そのままなんとなく無言になって、ふたりでパンを食べる。

 水沢はもうすぐ引っ越してしまう。長く一緒にいられないのだと思ったら、時間がもったいなく感じた。

「明日遊ぼうよ」

「え?」

「休みだし。あ、なにか用事ある?」

「ない、けど」

 唇を結んだあとに頷いてくれたので、オーケーということだ。早速張り切って行き先を相談する。水沢はどういうところが好きなのだろう。

「水沢はどこ行きたい?」

「公園」

「公園?」

「そう。公園が好き」

 ゲームセンターとか映画とか、そういう答えを想像していた。スマートフォンを出して、近くの大きな公園を検索する。

「せっかくだから、めちゃくちゃ大きい公園に行こうよ」

 そんなところが近くにあるのかはわからないが、できるだけ大きいところのほうが水沢が喜びそうだ。

 スマートフォンで公園を調べていると、視線を感じて顔をあげる。水沢がじっと見ていた。

「仲村って珍しいな」

「なんで?」

 そんなに変わったところがあるだろうか。自分ではわからないし、特段珍しさなんてない平凡な存在だと思っていた。

「なんかわからないけど、普通と違う」

「どういう意味?」

「うん、なんだろうな」

 言った水沢も不思議そうにしているので、ふたりで首をかしげた。

 水沢は、ときどきよくわからない。

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