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売られた喧嘩は買います  作者: あんことからし
秘剣・竜巻
17/21

第17話 完璧な仕事


エルザを吹き矢で仕留めたのは、エルザに足を折られたデニスだった。


「やった……やったぞ! ホホホーイ! 俺はあの赤い髪の鬼を討ち取ったぞ!」


デニスは上機嫌だった。だがそんなデニスを横目で見ながら、折角の勝負をぶち壊されたバクスは、煮え切らない思いで剣を鞘へ納める。仕事としては正解だが、勝負としては失敗だ。


「おいデニス。こっちゃ来い」


「へいへい、なんでやんしょ」


「誰が吹き矢なんか使えって言ったんだ? コラ」


バクスが不機嫌なのを見て、デニスは震えあがった。


「だ、旦那、俺は旦那のサポートをしたんですぜ?」


「それが気に入らねえって言ってんだよ。全く……剣士と剣士の戦いを何だと思ってるんだ。だが盗賊のお前に言っても仕方がねえやな。もういい。……この女をライナーの所まで運べ」


それを聞いたバクスは嫌な顔をした。


「あのう、俺は足が折れているんですが?」


すると、バクスは今にも斬りかかりそうな顔をして凄んだ。


「なめてんじゃねえ! とっとと運びやがれ、ぶった斬るぞ!」


「ひいい、すみません!」


デニスはあわてて、エルザに近づいた。


「あの……寝たふりとかしてませんやね……?」


「お前えが吹き矢で撃った薬だろがい……もし死んだふりだったら、後でワシが仇を取っておいてやる」


「そ、そんなあ……」


デニスは泣く泣くエルザに近づいて、肩に担いだ。


それを見たバクスは、エルザの剣と鞘を拾って納刀し、デニスに背を向けて歩き始めた。


歩きながら、バクスは考えていた。


「無様に転んだとはいえ、あの剣をかわすとは……。まるでおれの剣を知っていたかのような体さばきだった。吹き矢なんぞで終わりとはなんとも残念なことだ」


この技は、初動を誤解させて懐に入り込む必殺の技。運足に工夫があることと、両手で持っていると見せかけて片手で剣を伸ばし、瞬時に手首の回転で剣を回し、刃を相手の懐へ入れてかき回すのである。イメージとしては、バトン・トワリングみたいなものなのだろうか。


この回転が半身で躱すには足らないくらいの円なので、つい後ろに下がってしまうのだが、思った以上に伸びてくるので斬られてしまうのである。


それだけに、あの技を躱したエルザとの対戦を邪魔されたことは、バクスにとって非常の心残りなのだった。


エルザをライナーに引き渡すと、ライナーは手を叩いて喜んでいだ。


「最高だ! 完璧な仕事ぶりだバクス。死んだのは黒い蝙蝠の連中ばかりで、銀狼にダメージはない。それに、女まで生かして捕らえるとは!」


ライナーの騒ぎっぷりに、バクスは多少うんざりしながら肩をすくめた。


「今は薬で眠ってて、まる1日は起きん薬だが、個人差ってものあるからな。用心はしておけよ」


それを聞いたライナーはニヤリと笑った。


「へえ、そうかい。それはちょっと残念だな。ちょっとは泣いたり、暴れたりしてくれた方が興奮するってもんだが」


といいながらエルザの尻を撫でていた。


バクスはそれを聞いて、わかってないなあと思ったが、言うのはやめた。


「さっさと殺してしまった方が良かったもしれないが、もう、どっちでも構わん。それじゃあ、ワシらはこれで失礼させてもらうよ」


そう言ってバクスは部屋から出て行った。


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