タイトル未定2024/11/18 23:55
パワハラセクハラモラハラしまくりのトップたちに使い潰され疲弊する人々。そんなトップたちを妄信するネトキョクウたちにも振り回されたあげく悪化の一途をたどる地球環境。マトモな全生命体の願いの末に
ニホン国、とある西の都市。時計の針がもうまもなく午前0時をお知らせしそうだというのに、まだいくつものフロアには煌々と明かりがついているビルがいくつか。その中の一室。
「ああ、もう、もう駄目だ~」
パッターン
という音とともに一人の職員が倒れた。過剰な上司への気遣いと、職場への誹謗中傷デマのSNS対策、そして山のような業務量に疲れ果て心身ともにボロボロ、そして、それは一人ではなかった。
「わ、私も、もう耐えられせん…ヒ、ヒック」
女性からと様様な調整を押し付けられ、少しでもミスすると“オレの時給いくらだと思っているんだ、お前のそのミスのせいで…”とねちねち言われ、親の介護、子供の病気などで有休をとろうとすれば嫌味をいわれるという、ここはホントに先進国、労働者の権利はどこに飛んで行ったんだ、という状況で身を粉にして働きまくった女性がついに泣き出してしまった。
「ブカブカくんもヒショカさん、き、気の毒に。ブカブカくんはお子さんが生まれたばかりだというのに、もう3か月近くお子さんの顔もマトモに見れないとは。奥さんも育休をロクに取れない職場で保育所のお迎えもままならず、持病をもつご両親に頼らざるをえないなんて、お子さんがかわいそうすぎる。ヒショカさんもだ。あまりの忙しさに家にもロクに帰れず、パートナーも同様。そんなに忙しいのに薄給のため、お子さん二人を養うのに精いっぱい。そのお子さんも一人はモンスターペアレントを持つこれまたモンスターな子供がいる小学校でのいじめで精神を病むし、上のお子さんの就職先が圧迫面接ひどく、労働基準法違反すれすれのブラックとは。一回限りのイベントや使いもしないホールの建設費ばかりに金を出し、教育関係や労働保険関係部署の予算も削られまくってそういった問題に対処しきれていないせいだ。他部署とはいえ、少しでも君らの助けに慣れればいいんだが、ワ、ワシも大変なんだ。妻が介護疲れで、フラフラなんだ。うちの市ではやたら補助を制限したため訪問介護事業所が潰れまくって、ヘルパーさんを頼むのを一苦労だ。もう早期退職したいぐらいだが、年金でも暮らしていけそうにないし」
と初老の男性が涙ぐみながら、座り込み、いきなり拳で床を殴り始めた。
「こ、こうなることはわかってんだー!なんであんなパワハラトップを再選させたんだー!派手で目立つがロクに市民のためにならないような事業ばかりに金をかけ、自分の気に入らない、わからない分野は不必要といって予算を削る。部下や現場の人間の声、市長たちの忠告には一切耳を貸さず、自分の考えを無理くりに押し通す。そのくせちょっとでもうまくいかないと怒鳴り散らす。そんなんじゃ、職員は安心して働けないし、いいアイデアなんて出るわけないだろう!みんなビクビクして心身ともにボロボロになって使い潰されるだけだ。そんなところに有望な新人がくるわけないだろう、いっそ就職なんてしない方がマシって自給自足生活に入る若者が激増になるわ!なんであんなトップを居座らせるんだー!」
「わ、私たち職員や現場の人間の生の声、悲痛な叫びなんかより、SNSの勢いだけはいいセリフに皆騙されちゃって投票しちゃうんですよ。し、信じられないですよ、“職員さんなんて言い待遇なんでしょ”なんて近所の人が言うのが、毎日私が遅くにかえって、休日ロクに動けなくて家にいるのを見ているのに、うちの子たちが苦しんでるの見ているのに。そんなネットのデマを鵜呑みにしてあれやこれやとあることないこと噂して」
「はあ、僕の友人や家族でさえそんな感じです。妻と二人でクタクタに疲れて寝てるから付き合えないっていうと、どうせ暇な職場で遊んでるんだろーとか。実際にやっていることを説明しても信用してもらえないんですよ。学生時代に一緒に苦楽をともにしたはずの友人より、顔も知らないインフルエンサーのほうがいいなんて、いったいどうしたんだか。僕らの受けたトップからのパワハラやモラハラを具体的に説明しても根拠もなく出鱈目と決めつけて…。身近な現実よりネットの妄想の方が彼らにとってはリアルなんでしょう。もう付き合えなくなりました」
嘆いているのはこの三人だけではなかった。このような光景がこのビル内、この市、この県だけでなく、ニホン国中のあちこち、あらゆる市町村、あらゆる職場で繰り広げられた。いや、ニホン国だけではなかった。超大国パックスアメリカーナなんとか称したお国では議会に襲撃をかけろとあおるような人間がトップに返り咲き、違法に隣国に領土をひろげたトップが知的な人々の反対を押し切って独裁をしいて隣国の住民を虐殺し続ける有様。そのうえ、異常気象が迫りくるというのに金儲け第一、地球環境激変なら金儲けどころじゃないだろう、空気が無くても生きて金儲けするの?コンピュータに脳を再現でもして、その中で資本主義やる気なのかーだいたいモノを買ったりするのか、脳だけなのにどうすんだよ、というぶっとんだ発想のビーロン・マスクだのなんだのという超金持ちたちが一見科学的なようで荒唐無稽なお話をがなりたてているのである。目の前にある現実の出来事より、仮想空間でのリアルっぽい何かのほうが彼らにとっては真実らしい。
悟りを開いたような人間なら、ある意味、末世とか思いそうな世界である。マトモに考えるような人びと、いわゆるリベラルだのはそのような状況に抵抗し続けつつも、傲慢、我がまま、自分勝手なトップ連中やそれに従ういわゆる無知、無恥、モノを調べずインフルエンサーの言うことを鵜呑みにして何が悪いと開き直るネトキョクウたちに次第に追いやられていった。ついに、リベラルやマトモな人々は願った“もう、こんな世界から逃げだしてしまい”
それは人々だけではなく、ニンゲンが生活を脅かした生命たちもであった。
その何百、何千、何億という祈りが通じたのか、ある日
『あの~、あっちに行きますう?』
という、ちょっとオマヌケな神?の声が響いたのであった。
続く
一応、しばらく連載となります、このシリーズ。おおよそ3回ほどの見込みでございます、あくまで見込みです、悪しからず。