バディ
イズミはきれいだった。
つやのある真っ黒のショートボブと、白い肌。少しとろんとした目。けれども、斜めに流した前髪から覗く眉は、濃く整い、隠れた意思の強さを感じさせた。
物静かだけれどお笑い好きで、時々、ふにゃっと笑った。
*
水泳の授業。
安全確認の点呼のため、プールから上がったら、ペアと片手をつなぎ合わせて挙げ、「バディ」と言う決まりがあった。その日、私のペアはイズミだった。
ピーーッと先生の笛が鳴り、みんなプールから上がった。
目の前で、イズミがプールの端に手をかけて、体を引き上げた。紺色の水着がてらてらと光り、白い太ももの内側を、水滴が、つうっ、とつたった。プールサイドで、細い指が、水着のずれを直す。
それからゴーグルを外して、スイムキャップの上にずらし、こちらを見た。
私はこわかった。プールから上がったばかりなのに、かあっとして、うるうるしていた。
「大丈夫?」
イズミが私に訊いた。濃いまつげの中で、瞳が黒曜石のようにきらめいていた。
「大丈夫」
私は、ひんやりしたイズミの手を取った。
ただ、いまだけ。