第5話 狩りの終わり
「答えろ、お前らの主神はだれだ?」
「・・・・・・・」
魔物に問いかけるもなんの返答も帰ってこない。
そもそも魔物が人間の言葉を理解できるのかは知らないが。
「・・・って、なんか増えてないか?」
気のせいだろうか、魔物は何体か殺したはずだが数が減っていない。
いや倒したのは間違いないから確実に増えている・・・。
「国内で増殖されたら困るな、原因を見つけないと」
俺は階段を降り、奴らは鎌を構え、間合いに入ってくるのをじっと待っていた。
もちろんわざわざ狩られる為に近寄ってるわけじゃない、俺はこう見えても聖騎士(父親)の子だ、剣でお前らに勝ってやる。
「──【魔閃 雷切】──!!」
俺は魔力で剣を構築した、それは青白い雷を帯電させた長く緩やかな刀身を描いた。
以前はただの光輝いた剣だったが、今は雷光の刃をもつ剣となった。これも魔力が洗練されたからによるものだろう・・・。
「さぁ行くぞっ!」
足に力を込め一気に間合いをつめる。
普通であればそのまま切られるのが当然の結果だが、俺には太刀筋がはっきりと見える。
魔物は俺が間合いに入った瞬時に鎌を振り下ろした。そのスピードとても速いが スキルと技量の前では無とかした。
「──改変者──」
ブゥーーーーーーーン!!
鎌は空を切り、風圧の音が鳴り響く。
ズバッ!!
俺の刃は正面二体の胴体を上下に切り分けた。
改変者の未来を見る力は己の魂に触れることで、俺の身に迫る先の未来を見通すことができる。
そうつまり未来予知が可能なのだ。
「まずは2体、次いくぞっ!」
続けて背後からの攻撃を予知で回避し、正面を向いたまま剣を逆手に持ち替え、串刺しにした。
「3体目、くそっ!また増えてる・・・」
たった今、3体を仕留めたがステージ近くにある扉から次々と姿を現す。
あそこは、ガラクタ置き場だったはず・・・。その時、1つの考えが脳裏をよぎった。
「もしかしたら、あいつらってガラクタか?」
まさかとは思ったが、あの部屋にあったものはそれくらいしか無かった。
もしこの考えがあってるなら、奴らはあの部屋の中に何十、何百といるはずだ、剣で一体一体切ってる暇はない・・・。
この周辺にはこいつらの気配しかないから、火力をあげても良いだろう。
「仕方ないが この施設ごと吹き飛ばす 燐魔爆発!!」
ホール内にいっきに鱗粉が立ち込め、声と共に爆炎をあげる。
ドゴォーーーーーーーーーーーーーーーン!
盛大に魔法を解き放ち、建物は見るも無惨に倒壊をした。
煙で魔物を視認出来ないが魔物気配は感じなかった。
ここの魔物は倒せたが、楽器が壊れることで魔物に変身すると言うなら、国中にいるはずだ・・・。
俺は煙と瓦礫を抜け、建物外にだ脱出した。
今さら気付いたが、空は曇天で周辺には駆け付けた者はいなかった。
「騎士はどこだ?応援は来ていなかったのか?」
俺が魔物と戦うのに騎士の手助けは不要だが、ネアトゥルフをあげる演奏ホールで事件が起きていると言うのだから、駆け付けるのは当然だ。
きっと魔物はまだいる・・・。
「くそっ、追いかけるか」
予想ではあるが、避難者は国で最も安全な城に向かうと思う。
「無事なら良いが・・・」
避難者が集まっているだろう城には数分かかる。俺の足ならすぐだろうが、まだ安心は出来ない。
どうか無事でいてくれと願うばかりだった。