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ナイア〜その男、シナリオの改変者〜  作者: 未練
夢見の演奏編 1〜13話
3/14

第2話 ナイア12年前の過去に降り立つ

「ここで間違いないな・・・」


タイムワープを終えた俺はエリーさんが寝たきりになってしまった日、つまり12年前のネアトゥルフに降り立った。


ここは貿易国家だけあって商店街は異様なほどに活気に満ち溢れている。それは今も昔も全く変わっていない。



中でも国をあげる建造である演奏ホールは長蛇の列が出来ており、並ぶ人全てが貴族と見受けられる高貴な服装をしている。



俺は、タイワープと伴い彼女から記憶を得たが、ホールの演奏終了後に魔物に誘拐され、謎の魔法を浴びせられた後の記憶がない。



恐らくそこからエリーさんは12年後の未来(現実)に至るってところか。



それはそうとして・・・。



「どうやって中に入るか」



エリーさんの記憶によると、このホールは貴族しか入場チケットを購入出来ず、一般人はもちろん冒険者すら中に入れないようだ。



俺は名家のロゼリック家だから入れることには入れるが、肝心なチケットがない。


「誰か使えそうな奴はいないか・・・」


奪うのは心苦しいが、そんなことで悩んでいたら探索は進まない。俺はじっと周囲を見渡した。



「んーっ?あれは・・・」



見覚えのある顔があり、俺は目を鋭くして見つめる。


「・・・ドンだっ!」



ドン・ネイチル



あいつは貴族としては身分が高く昔から他人を見下し罵倒するクソだから嫌でも顔を覚えてしまう、とエリーさんの記憶をが言っている。



会う度に下民と呼び捨ててくるクソ野郎だから心も痛まない。



「よしっ、利用しよう!」



俺がそう呟いていると あっちの方から声をかけてきた。

そしてドンの連れていた取り巻きに周囲を囲まれた。


「何ガンつけてきてんだ下民!こんなところで何してやがる。もしかしてお前の分際で演奏を聞きに来たのかっ?」



案の定 下民と呼び捨ててきた。やっぱりこいつはクソ野郎だ。



ていうか、俺は一様貴族だぞ?まぁあいつは俺を知らないだろうけど。



「そうだけど何か?」


「お前みたいな低俗が入れる場所じゃねぇんだよっ!」


「そうだ、けぇれ!」


取り巻き達もドンにのっかり 集団で煽り始めた。


俺には、お前らみたいな奴に音楽への関心があるとは思えない、どうせ興味がないなら貰っても構わないよな・・・。



「全くエリーには振られるわ、変な輩にガンを付けられ、ろくなことがないぜ。まぁこの後、未来の嫁とデートなんだけどな」



ドンはヘラヘラとした態度で自慢気に話す。



俺はそれを「ふぅーん」と鼻で笑ってやった。



イラついたのかドンはすぐさま胸ぐらをつかみ、睨みつけてくる。



「何がおかしい、下民」


「何って?可哀想だなってと思ったんだよ・・・お相手の方がな」



こんな奴と結婚なんてろくなもんじゃない、きっと悲劇の結末を迎える人って言うのはエリーさんだけじゃなく、ドンのお相手さんもだ・・・。


「まぁ、とりあえず落ち着けドン。今すぐに手を離して1歩下がった方が良い」


「俺に手を引けだとーーっ!」


ドンはより一層ガッチリと俺の胸元を掴む。


俺はその手を上から強く握る。


それは逃れようした訳ではなく、俺には触れた対象の未来を見る力も備わっているからだ。



これからドンには鳥糞が落下する。そんな未来が見えたが俺は教えない。



まぁせめてカウトダウンだけはしようと思う。



「10・9・8・7・6・5・・・・2・1・0」



結果、ドンは手を離さなかった。



ベチャッ と、気持ちの悪い音が鳴る。



「あぁぁぁぁーー俺の頭がぁぁぁぁーー」



ドンの頭上に鳥の糞が落下し、盛大に髪や服が糞まみれになった。



「くそっ、くそっ、くそーーー!」



ドンは慌てて糞を払う、その際にチケットが足元に落ちる。



「ドンさんに何してんだ、てめぇー!」


取り巻き達が声と拳をあげ、俺に突っ込んできた。



スキルは使ったが別に直接関与した訳でもないし、ノーカンだよな?



「いまだーーっ!かかれいっ!」



と取り巻き達が勢いよく拳を振り落とす。

その様子を見て、ドンはにやっと笑うが・・・



ドスッ! バコッ!



次の瞬間・・・ドンの顔は恐怖に歪んだ。



俺は取り巻き達の拳を避け、峰打ちをし、全員を気絶させた。



あいつはの目からしたら俺はただの輩かもしれないが、これでも名門ロゼリック家の長男だから、勝敗は当然の結果だ。



「ひぃーーっ!お、お前 俺達にこんなことしてただで済むと思ってんのかっ!」


「ああ。済むと思うぞ、お前が無茶をしない限りは」


俺は奴に触れた時、先の未来が見えた。その未来には突然病にかかり寝たきりになるドンの姿があった。


エリーさんのシナリオ改変が済めば、もはやドンが俺に構う余裕はない。



「く、下民の分際で・・・父さんに言いつけてまともに生活出来ない様にしてやるっ!」



ドンはそう言うなり、どこかへ走り去ってしまった。



「体には気を付けろよ・・・」



こうして俺は、ドンの落としたチケットのお陰で無事に演奏ホールに入ることが出来たのだった。




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