第13話 改変されたシナリオ
グニャリとねじ曲がった視界は輪郭を取り戻し、現実へと帰還したことを教えてくれた。
辺りを見渡せば何も無い平地に立っている。ここは確かロイドさん達の家があったはずだが、それがない。
「そうか・・・もしかしてっ!」
嬉しい期待を胸に俺は、ネアトゥルフへと向かった。
見慣れた景色の広がる通りを歩き、貴族が住まうエリアに足を運ぶ。
すると、またしても見慣れた夫婦が幸せそうに少女と手を繋いで歩いている。
「お母さん、今日のご飯はなに?」
「そうね、レイの好きな物にしましょう」
「うん、それがいい。良かったなレイ」
「やったぁ嬉しい!」
少女は満面の笑みを浮かべ、両親は我が子と共にお店のある商店街の方へと歩みを進める。
親子は俺が通りすがると笑顔で会釈してくれた。それはただの通行人に対してするものと相違なかった。
3人はそのまま通り過ぎていく。
「ねぇ、そう言えば私の名付け親の人ってどんな人だったの?」
「うん?そーねっ、若くて強く、優しい人だったわ・・・なにより私達の命の恩人だからね」
「へぇーそうなんだ、今は何してるんだろうね?」
「さぁ彼のことだから今も何処かで誰かを助けてると思うは、だからそうばったり会うことなんて・・・きっと無いわよ、そうよね貴方?」
「ああ。そうだなエリー、彼に限って偶然会うことはないと思う。だがもし会えたとしたら・・・それは偶然ではなく必然だ」
俺は彼らの会話に思わず振り返ってしまった。
そして目が会った。
エリーさんとロイドさんは俺の方を見て笑顔を浮かべている。その時、微かに口が動いてるのが見えるた。
「ありがとう」そんな風に言っていた気がした。
本当に良かった。
そんな思いで俺は、笑みを浮かべ、止まった足を再び動かす。
目的は果たしたし、これ以上先に進む理由はないが彼らが見えなくなるまで進むことにした。
これで夢見の1連の奇怪は終わった。
事件に巻き込まれ、悲劇のシナリオに行き着くはずだった人の運命は、これからますます良い方向に進むことだと思う。
でも世界にはまだまだ奇怪が起きている。
これはまだ始まりに過ぎない。過酷な戦いは必ずきっと何処かで待ち受けている。
だが俺は必ず運命を良き未来に変えてみせる。両親や友人が生きている世界線に辿り着くまで・・・。
そして必ず報復してやる──待っていろよ邪神。
これにて第1章は終了です。
これまでお読み頂きありがとうございました。第2章の制作の進行が進み次第、随時投稿していきたいと思います。
是非第2章も読んで頂ければ幸いです。