宴会
黒みつ「カルローン、カート持ってこーい」
カルロン「はーい」
ミョウ「何買うの?」
黒みつ「今在庫ないかったはずだから
飲み物とお菓子とつまみを補充しようかな」
かいる「飯は?」
黒みつ「寿司とかピザでも頼むわ」
かいる「なるほど、いいね」
るしふゃ「お金どのくらいもってきたの?」
黒みつ「余裕だから気にすんな
じゃそれぞれカゴもって必要なやつ取りに行け、
俺が回収するから」
一同「わかった」
メンバーは早速各コーナーで物色を始める。
黒みつはカートのタイヤをころころと転がして、
それぞれが選んだものを回収しにいった。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
カルロン「お、来た来たー
もう選び終わってるよ」
まず向かった飲料コーナーで
黒みつを待っていたのはカルロンだ。
そこに置かれていたカゴには、
大量の缶ビールと数本の日本酒とワイン、シャンパンもある。
さらにその隣にあるカゴには
5本の五ツ矢サイダーのペットボトルに、
3本のファンタジックも置かれていた。
黒みつ「お、結構酒も入れたんだな
良いんじゃない?ジュースは家にも残ってるし」
カルロン「よっし」
たぷたぷと音を立てるカゴを
黒みつは軽々とカートに乗せた。
しかし、まだまだ乗せる者はあるのに、
ぎっしりとペットボトルや缶が入れられた
そのカゴの重さは相当であるため、タイヤが軋む音が聞こえる。
カルロン「うわ…カートから音なってない?」
黒みつ「大丈夫だろ」
カルロン「とか言いながら俺ら前科あるじゃん」
数ヶ月ほど前、今回と同じように
任務の帰りに買い出しに出た時。
珍しく後処理の必要がなく一緒に帰っていた菊池と、
蘇生の必要がなくテンションが高かったふらくたるが
どんどんと飲み物をカートに入れていき、
誰も止められなかったことがあった。
結果、レジ向かう途中のスーパーのど真ん中でカートは潰れ、
積んであったものがぶち撒けられるという
なんとも馬鹿らしい事件が起こってしまった。
勿論、弁償は菊池に押し付けられた。
黒みつ「あー…そうだな…菓子類だけこっち乗せて
もう一台カート追加するか」
カルロン「ワイが持ってくるからお菓子拾っといてー
ついでにおつまみ見てるミョウバンも拾っとくよ」
黒みつ「ん」
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒みつ「お、お菓子?何選んだの?」
次に合流したのは
お菓子コーナーにいたAだ。
地面に置いたカゴの中に山積みのお菓子が見える。
黒みつ「えーと、カントリーオカン、
ポテチ、じゃがじゃがまりこ、チョコレート、ね」
A「どうかな?」
黒みつ「もうちょい多めに
お得用のやつ入れとけばいいかもな
どうせカートもう一台くるから
もうひとカゴ分用意してもいけるだろ」
A「りょうかーい」
そう言うと、Aは棚に残っていた
お得用の袋をさらにカゴに積み込んでいく。
黒みつ「いいじゃん、そんなもんかな」
A「はーい」
3色全部揃ってはいるものの
殆どが緑のじゃがじゃがまりこ、
小分けになっている大量のチョコ、
そして10袋のポテチがカゴに詰められた。
黒みつ「危ない危ない、忘れるとこだった」
ギリギリで引き返した黒みつは、
カラパクーチョを一袋カゴに入れた。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
カルロン「黒みつー--ー!!!」
黒みつ「カr…おいなにやってんだ」
菓子類のカゴのうち一つを
飲み物が乗った音のなるカートへ乗せてAが、
もう一つは手に持って黒みつが運び、レジの方へ向かうと、
丁度大量のおつまみとカルロンを乗せた子供用カートと
死んだ目でそれを押すミョウバンの姿が見えた。
カルロンは人間とはかけ離れた姿で、
大きさは幼児と変わらないものになっており、
子供用の椅子に問題なく座れるようになっている。
カルロン「おつまみ持ってきたよー」
黒みつ「子供用カートとおつまみって
最悪の組み合わせだと思わなかった???」
カルロン「体重制限はバッチリ守ってるから」
カルロンは人ではない。
『扉』の向こうの異世界とはまた違う、
別次元からやってきた人幻である。
人間の模造種である人幻の肉体はほぼ空洞であり、約5㎏である。
黒みつ「そういう問題じゃねぇだろ()」
ミョウ「なんでこんなことさせられてるの…」
カルロンはカートから降り、全てのカゴがレジに入れられる。
残りのメンバーはレジの先へと向かう。
店員「次の方どうz…あぁ、あなたたちでしたか」
黒みつ「また頼むわ」
店員「いつもありがとうございますー…
四番レジにヘルプお願いします」
宴会のために買うものはいつも多い。
一つのレジでは時間がかかりすぎるため、
他の店員を呼んで手分けして終わらせるのだ。
会計が終わった商品をすぐに詰めるために、
他のメンバーは先回りする。
ミョウ「いつもすいません」
店員「いえいえ、こっちも助かってますから」
店員「カート壊されたら溜まったもんじゃないけどww」
黒みつ「それはに関してはほんっとに…
うちのバカ共がすんません…」
結局三人がかりで会計してもらい、
5分ほどかけてようやく全ての商品を詰め終わった。
黒みつ「おい…誰だ変なの入れたの」
A「さ、さぁ…」
カルロン「誰でしょうねぇ」
黒みつ「お前ら…」
レシートを見つめながら駐車場で待機していると、
先ほど家へ向かった車が戻ってくる。
サソリ「強制運転交代懊悩」
黒みつ「サソピー運転できますか」
サソリ「できません」
黒みつ「よかったですね」
ミョウ「毎回宴会前は大変だね…」
重いカゴをいくつも積み込み、
帝国民たちを乗せた車は引き続きサソリが
とても慎重な運転で帰り道を走った。
◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇
黒みつ「えっとじゃあ、今回の任務、は…
原ー……なんだっけあの…チャラいやつ!
と、その焼肉教を潰せたことを祝して
かんぱああああああい!!!」
一同「かんぱ~~~い!!!!」
買い出し組が戻ってすぐに、
依頼完了を祝して宴会が始まる。
NWK帝国では、大きな依頼を片付けると
たいていこうして宴会を開くのだ。
菊池は現場で後処理の真っ最中だが。
黒みつ「とりあえず7時までは酒開けるなよ、
早めに潰れたくないかrちょ待て
開けるなっておいカルロン」
早速缶ビールに手を伸ばし始めたカルロン達を慌てて止め、
酒の入った段ボールを隠しにいく黒みつ。
しかし黒みつが出て行ったのを確認すると、
怒られる前にとどんどんお菓子の袋が開けられていく。
黒みつ「おい全員お菓子開けまくるな!!」
すぐに戻ってきた黒みつだが、
開いた袋はどうしようもない。
もはや止められないと悟る。
るしふゃ「お菓子早く食べたかったからついね」
黒みつ「いや飯食えなくなく……ならないか」
かいる「おかし食べてぇです」
黒みつ「食え食え」
これが我らが母が折れる瞬間だ。
かいる「や っ た ぜ」
黒みつ「諦めて食っちまえ」
かいる「お菓子くらいで満腹にはならないから安心してください」
ミョウ「僕も食べよ」
黒みつ「寿司食おうぜ」
A「寿司食べたい」
サソリ「食べよう」
かいる「サーモンください」
このままではお菓子が
一瞬で無に還ると思い提案した案に
次々と賛同していく帝国民。
黒みつ「どんどん食ってけー」
かいる「残したらもったいないもんな」
ミョウ「卵もらってこ」
いゆ~り「まぐろ軍艦は渡さないからな!!!」
黒みつ「焦らなくてもまだ沢山あるから…
あと鉄火巻きな」
サソリ「おしおぺろ」
かいる「てかこんな量の寿司買って大丈夫なんすか?」
明らかに高そうな寿司がこの大人数で食べる量があれば
一人くらいは気になる疑問を投げかける。
黒みつ「全部菊池のカードとポケットマネーで払わせたからどんどん食えーい」
A「まじか」
黒みつ「当然今回の戦犯に払わせるんで」
菊池は、以前カートを壊した際の
弁償代も払わされている。
その時は菊池も原因であるため
当然の結果なのだが…
年中金欠を嘆くも、
知らぬ間に更に出前を大量購入される彼に
同情する者もでてくる。
いゆ~り「流石に申し訳ないなぁ…」
かいる「菊池さんに金返さなきゃ」
黒みつ「とりあえず!
あいつ帰ってきてないから死ぬほど食え!」
カルロン「よーし明日食べなくても
良いくらいに沢山食べるぞー」
黒みつ「1週間食わなくていいくらい食っちまえ」
A「そこのサーモンもらうね」
かいる「あ、そこのピザもらっていいですか?」
黒みつ「どんどん食えー
あサーモン俺のも残しといて」
かいる「なんでお腹が満たされないんでしょう」
黒みつ「菊池の金だからじゃない?」
かいる「あっ」
ミョウ「いくらうっま」
かいるはこの中でも特に菊池に同情しているのだが、
共に戦ったミョウバンは
菊池の金で寿司を食っている。
カルロン「きゅうり巻きは誰にも渡さんぞ」
黒みつ「河童巻きな
ちょお前らなんで軍艦巻きの名前覚えらえないの???」
かいる「ちょっとコンビニ行って
追加買ってきまーす」
黒みつ「あ、アイス頼める?」
かいる「うい!いってきまーす」
かいるが玄関から飛び出してしばらくすると、
階段から一つの影が現れる。
ふら「んばぉ…宴をしよるのか」
黒みつ「お、ふら“たく”るー
とりあえず飯食え、菊池の金消費させようぜ」
ふら「菊池の金か、よしきた暴食だ
あとふら“くた”るな」
黒みつ「暴食するぞーーー!」
ふら「ウィーーーーーwwww」
寝起きのふらくたるも宴に加わり、
アルコールが入っているような
ハイテンションぶりを見せつける。
朝起きたときはこうもいかないくせに、
気絶からの目覚めでは絶好調のようだ。
かいる「ただいまあああああ」
一同「おかえりぃ!」
必要以上の大音量でドアを開け、
凹凸が表面に浮き出た袋を手に提げたかいるが帰宅する。
かいる「アイスあるよ!何食べる!」
ふら「チョコミントを寄越せ!」
黒みつ「ふらくたる増殖か?
あ、パピポある?」
かいる「アイスコーナー全部買ってきた!食え!」
ふら「うめぇ!おいミョウバン!踊れ!」
ミョウ「うぇいうぇい」
ふら「よくやった!褒美は死だ!」
ミョウ「理不尽すぎる」
雑な寸劇が行われるほどには
全体的に馬鹿になってきているようだ。
そんな地獄へ足を踏み入れる者がいた。
「ほーぅ騒がしいな!宴やってん?」
黒みつ「お、愚味愚臭じゃねぇか」
「黙れ」
やってきたのは、かわいらしい顔の
電子仮面をつけたマント姿の男。
菊池と同じように
シェアハウスには住んでいない男性帝国民の
『無味無臭』だ。
彼は変更したスマホのパスワードを忘れ、
初期化するはめになった“愚かさ”のために
一部の帝国民から“愚味愚臭”と呼ばれている。
黒みつ「丁度いいとこにきたな、今ふらがチョコミント食うとこ
お前生贄になって土から生えてこい」
無無「は?」
カルロン「何もしてないくせに
宴会にだけ来やがってーういうーい」
無無「この依頼承諾したの僕やけど」
カルロン「好きなだけ食べるといいよ!
どうせ菊池の金だし」
無無「っしゃあ!!」
かいる「うわーダメだ
やっぱ罪悪感がすごい!
金返してくる!」
ふら「いってらっしゃーい」
黒みつ「コンビニで生ハム買ってこよ」
サソリ「俺もなんか買おうかな」
ミョウ「飲み物の追加買お」
これだけの飲食物があるというのに、
まだ買い足そうとしている彼女たちの
胃と頭はおそらく壊れているのだろう。
そうこうしているうちに少しずつ
腹が満たされてきた者もちらほらと出てきた。
ふら「はー美味かった
よしテトリヌやろう!!!!!
相手はいませんねぼっちぼっち!!!!!!」
無無「付き合おうじゃないか」
ふら「はい救世主ーー!!
アルコール度数256のテトリヌキメキメ~ッッッッ!」
無無「何言ってんだ」
ふらくたる「DT砲でボコボコにしてやらぁぁぁぁぁ
Avocadosfrom Mexico」
テトリヌをプレイすると
テンションが上がるふらくたる。
しかしまだゲームを起動したところだ。なにも始まっていない。
ふらくたるも、それに付き合う無味無臭も
とても酒臭いしうるさい。
黒みつ「ただいまー」
かいる「ただいまー」
一同「おかえりー」
かいる「あ、そういえばなんか財布の金が1万5000円くらい
消えてるんですが何か知りませんかね?」
いゆ~り「さぁ?」
ミョウ「なにそれこわ」
黒みつ「菊池が奪ってったよ」
かいる「えっ…???」
ふら「菊池最低だな!!」
無無「適当なことを言うな、僕です
車がありえんほど汚れてたから
罰金でぇぇぇぇぇす」
ふら「マジかよンドレッツ・愚味最低だな!」
黒みつ「生ハムくう?」
いゆ~り「欲し~い」
かいる「食べたいです」
黒みつ「いっぱい買ってきたぞー」
サソリ「生ハムでブロッコリースプラウトを包むと
美味しいらしいです、食べたことないけど」
黒みつ「生ハムとフランスパンの
相性完璧だと思う」
かいる「生ハムでチーズ巻いて揚げると
マジおいしいんで作ってみてください」
ふら「生ハムの食べ方講座開くな!!!」
謎の食材相性豆知識が始まったところで、
玄関から本日の戦犯が帰宅する。
菊池「だぁぁぁぁッッッ…
お前らちょっと聞いてくれよォ…」
黒みつ「あ、今日の財布じゃん」
菊池「は?」
ようやく仕事を終わらせたと思ったら
自分の金が減っていて、
途方に暮れながら帰宅したところ、
待っていた酔っ払いに財布呼ばわり。
誰だってこんな反応をする。
菊池「俺の財布の金消えてたのって…」
ふら「そういうことですねざまああああ」
黒みつ「カードでも払っといたよ」
菊池「えっ…また借りなきゃじゃん」
黒みつ「草」
可哀そうな菊池の借金を増やし、
宴は続いていくのだった。