表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
NWKの魔窟  作者: ジェネラル雅
10/11

会敵

紅華(くれは)「今こそ、百鬼夜行を始めるときだ!

人間界への“界門”を制圧し、夜のうちに侵攻を始める!」


館に集まった大小様々な妖怪の戦闘部隊、

通称奇人組の前で紅華が声を張り上げる。


万優(まひろ)「大々的に攻めるとは言え、

初めから真っ向勝負は避けたい。

幸い、“界門”は人間どもの街から少し離れた山にある。

詳しい人員は追って指示するが、

隊長は天狗、目付役として李月(りつき)が同行する」


李月「よろしくな!」


奇人組員「あいつ、目付役の意味わかってんのか?

輝いた目で見てるぞ…」


奇人組員「万優様が押し付けたかっただけだろうな…」


より強い《妖星界》の創生に向けての第一段階。

手始めに"最弱の種族"と呼ばれている

人間が多く住む世界、

人間界へと攻め込む作戦は万優が立案した。

妖星界と違い長らく平和で、障害といえば

そこまでの武力を持たない警察組織くらいしか思いつかない。


それでも早期に侵攻が発見され、

対策されてしまえば占領に大きな支障が出てもおかしくない。

一気に攻撃、侵攻する準備を整える必要がある。


天狗「なんだぁ?こいつが目付けかい」


列を割り、緊張した空気を壊すように現れたのは

紅くシワが目立つ肌と、異様に長い鼻をもった

奇人組二番隊隊長の天狗だった。


この男は現奇人組最強格の男であり、

万優はこの男に先遣隊を任せた。


万優「うだうだ抜かすな、命令だ」


天狗「へいへい…どうせ下位の

ガキしかもらえないんでしょう?

うちの下のモン連れてっても?」


万優「ああ、構わん」


天狗「わかりやした、姐さん」


李月「なんか万優おっさんみたいだぬうぇっ!

痛い!!痛いよ万優!!!」


余計な口を挟んだ李月の頭を、万優は鷲掴みにして黙らせる。

その様子に、集まった者たちも笑みをこぼす。

しかし和んでいる場合ではない。

彼らは今から、人間界へ攻め込むのだ。


万優「今後、侵攻作戦は加速していくだろう。

三から五番隊も準備を怠るな

いつ出撃してもおかしくはない」


紅華「いよいよ始まる我々の波動に、

手を貸して欲しい。よろしく頼むぞ!」


最後に勇ましい演説で締め括ると、

それに反応した妖怪達の声が鳴り響く。

それは館の外まで響いていた。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




黒みつ「ほら、早く行くぞ」


無無「いやだ!いやだ!」


先に行ったカルロンとふらくたるには、

合図と同時に悲鳴をあげるように言っている。

夜ということもあってやる気に満ち溢れているふらくたると、

それを止めるどころか同じくハイテンションであろうカルロン。

いつまで我慢できるかはわからない。

早いところ発散させなければ、計画を台無しにされてもおかしくない。

黒みつは案外急かされているのだ。


無無「やっぱ無理だよこんなの!!!」


腹をくくっても、やはり暗い森を目の前にすると

怖気づいてしまい、黒みつの気持ちも知らずにうずくまる無味無臭。

それを見た黒みつは腹が立ち、

“絶対に連行するマン”モードのスイッチが入った。

しゃがんでいる無味無臭に手を伸ばすと…


無無「あああああああああああ!!!!」


仮にも男性であり、数㎝差ではあるものの

黒みつより大きい無味無臭を軽々と持ち上げてしまい、

そればかりか片手で各チームに連絡を送ってすらいる。


黒みつ「飯食ってないアホは持ちやすいな

筋肉も脳みそも詰まってないんだな」


無無「お前よりは賢い」


黒みつ「は?」


無無「うわあああああごめんって黒みつ

やめて進まんとって!!!」


急に冷静になる無味無臭だが、

抱えたまま森へ進まれてはたまったものではない。

しかし抵抗する術は皆無、あったとして黒みつに使えば

後で更に恐ろしいものをぶつけられかねない…


黒みつ「そんじゃ、行ってくる」


無無「あぁぁぁぁ…」


結局、黒みつに担がれたまま

無味無臭は肝試しの地へと連れていかれた。

夜山から何度も響いてきた悲鳴は

付近に住む住民を怖がらせたとか。




◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇◇




ふら「もう叫んでいい?」


カルロン「ダメ」


肝試しの山の山腹付近では、黒みつ達よりも先に出発し

無味無臭を驚かせるために潜伏している

カルロンとふらくたるの二人が

今か今かと黒みつからの連絡を待っていた。


ふら「まだ?」


カルロン「まだ。」


山頂で待っているミョウバンが

登頂途中に結晶で作っていった

不気味なオブジェクトはそこら中にあり、

二人のいる場所の近くにもそれはある。


ふら「まだ?」


カルロン「ダメ」


カルロンとふらくたるの役目は、

遠くから悲鳴を聞かせることと、

途中から道に潜み驚かせることだ。


ふら「そろそろいんじゃね?」


カルロン「まだ待って」


この時のために、ショッピングモールでも

主にベンチで体力を温存していたふらくたる。

イベントが起こるときはいつもハイテンションであり、

待ちきれなさそうにそわそわとしている。


ふら「も~~~そろそろいいでしょ」


カルロン「なわけ」


いつもならカルロンも止めたりはしない。

むしろ他のメンバーに止められるようなタイプだが、

今日に限っては勝手が違う。

午前中やらかしたことでキツく絞られ、

しばらくは黒みつに従う構えを見せているのだ。

勿論、全ては食事当番を延長されないため。


ふら「m」


カルロン「シッ、通知が来た」


二人の間に緊張感が漂う。

恐る恐るカルロンのスマホの画面を見ると…


[遅れたが今出発、次の通知を待て]


ふら「はぁぁん?今出発???」


カルロン「まぁ、我慢するのも後少しでしょ」


ふら「もおおおお…ん?」


がっかりするふらくたるの目に何かが映る。


ふら「なにここ、動物でもいんの?」


カルロン「音もないし、気のせいじゃない?」


ふら「うーん」


カルロン「まぁとりあえず、

そろそろくるだろうし電気消すよ?」


無味無臭が来るまでの間の視界を

確保するために置いていた電灯を片付ける。

二人ともそれなりに夜目はきくため、

そのままうつ伏せになって待機する。

各種怖がらせるための道具も握りしめている。


ふら「…いや、やっぱなんかいない?」


何か影のようなものが動いているのを確認したふらくたるが

不安になってカルロンに聞くが、無言で首を振るだけだ。


ふら「う゛ー--ん゛」


カルロン「気のせいd…来た!通知だ!」


取り出したスマホに写っていたメッセージは


[一回目、5秒ほど悲鳴を頼む]


二人「「っしゃ行くぞ!!!」」


二人は完全に張り切って大きく息を吸った。


カルロン「きゃああああぁぁぁぁぁっっ!!!」


ふら「出たあああああぁぁぁぁぁ!!!!!!」


カルロン「いやあああああああぁぁぁぁぁ」


ふら「あああああああああぁぁぁぁぁっっっ!!!!!!」


カルロン「待って待ってふら長いいっぺん黙れ」


ふら「ヴォ」


待ってましたとばかりに大声をあげる二人。

その声に驚いたのか、

眠っていたであろう鳥達が一斉に飛び立つ。


ふら「ふ~、どんくらい喜んだかな」


カルロン「ドローンで撮影してるらしいし

後でじっくり見るとしようではないですか」


ふら「ふっふ~!楽しみ~」


二人は次の指示を待つため、

先ほどまでのようにうつ伏せの姿勢に移る。


ふら「あともう一回悲鳴あげるんだったよね?」


カルロン「うん、そのあとはお化け役だね」


ふら「どぇへへへ」


一度叫んですっかり楽しさを覚えた二人は、

先程よりもそわそわしながら次の指示を待つ。


だが。


ふら「…ねぇやっぱなんかいる」


カルロン「まだ言うの?

そろそろ近づいてくるし気にしない方がいいよ」


ふら「うーーーん」


ふらくたるは先ほどから視界にちらちらと映る影と、

高揚感の中にある不安のようなものが気になっていた。


ふら「気のせいだといいんですけどもね…」


カルロン「きっとそうやろ………うげっ」


ふら「どうした」


また黙って待機しようとした矢先、カルロンが突然呻いた。


カルロン「…ふら、動いてない…よな?」


ふら「え、うん、動いてない」


カルロン「…な゛ん゛か゛に゛踏゛ま゛れ゛た゛」


そう言ったカルロンの声は悔しげで、

それを聞いたふらくたるはわかりやすくドヤる。


ふら「ほ~~~~~らいた、やっぱいた、

いたね?いましたね?愚かルロン君」


カルロン「うっせえ!」


ふら「気~のせいなんじゃな~~~い???ww」


カルロン「…チッ」


露骨に煽るふらくたる。

普段黒みつを煽っているのを忘れて

苛立つカルロン。


ふら「あ、また通った」


カルロン「…今のは俺にも見えたけど…小動物?」


ふらくたるよりは夜目がきくカルロンの目は、

二本足で走り抜けたナニカの姿を捉えていた。


カルロン「あれ、なんだろう」


ふら「うーんなんか嫌な予感がするなぁ…」


そもそも肝試しに選ばれるような不気味な山だ。

不安を感じた二人は、黙り込んでしまう。


カルロン(ど、どうする?)


ふら(でも今から中止にもできないし…)


カルロン(そりゃそうだけど…)


もしそのナニカが、

自分たちより遥かに強い存在ならば…


ふら「…しばらく電気つけよう」


カルロン「…だね

ワシはともかくふらが死んだら洒落にならん」


ふら「死にたくねぇ~…」


苦い顔をしながら再び電灯を取り出すカルロン。

先ほどよりも少し光を強く設定して電源を入れる、と。


「ギャアァァァ!!!」


二人「ギャアアアアアアアアアア!!!!!!」


復唱するように叫んでしまう二人。

明かりに慣れてきた頃、

獣のような呻き声をあげて

顔を隠し倒れるソレが人型だと認識する。


胸ほどまでの高さしかないものの

それなりに筋肉質なのがわかり、

体には簡易的な鎧をつけ、武器も持っている。


カルロン「ナニコレェェェェェ」


ふら「あ゛あ゛あ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛ぁ゛!!!」


その不気味な生き物に驚き、

のけ反りながら二度目の悲鳴をあげる


「ギェアィィ」


小さく鳴き声をあげたそれは、

二人に向き直って武器を構える。

粗末な武器に粗末な防具だが、

人間を殺すのには十分だろう。


だが、こちらには『人幻(にんげん)』がいる。

架空の存在と言われている人幻。

しかし、何度も言うがカルロンはソレである。

天使であるふらくたるはそうもいかないが、

カルロンならば簡単にやられはしない。


ふら「いける?」


カルロン「まぁ一応…今日は拷問器具入れてねぇけど」


普段から帝国内で喋ることもあり、仲も良好。

しかし、二人だけで戦うことはまずない。


カルロンはルーレットを回すことによる

味方支援が主な役割であり、

仕事で使う拷問器具や爆薬は今回は持ってきていない。

ふらくたるは後衛として

時間をかけてバフやデバフとなる呪いを扱う。

どちらも能力はサポートタイプであるうえに、

物理的な力も人並み以下、というよりゴミカス(クソ)

お世辞にも肉弾戦に強いとは言えない。


カルロン「ミョウバンに連絡取れれば

なんとか…ってとこかな」


ふら「敵は一体だけだし…」


カルロン「…やるか」


それは名づけるなら、小鬼といったところか。

二人が話している間も

適度な間合いを保ちながら様子を伺っている。


ふら「ちゃんと守れよ!」


カルロン「そっちこそ頼んだかんな!!」


覚悟を決めて呪いの準備を始めたふらくたると、

ルーレットを出現させるカルロン。


カルロン「頼む~攻撃タイプ来い~~~」


二人分のバフを積んで

力任せに殴るという脳筋的戦法。

この二人に、そもそも帝国民に、

まともな脳みそなんて

あるはずがなかったのだ。


それでも、頼みの綱である

ミョウバンに連絡を入れるのを忘れないだけマシだろう。


[女の像の近く、緊急で]


ひとまず一番近くにあった

ミョウバンの結晶像を目印に、

ミョウバンへとメッセージを送る。


ミョウ「…どれだ」


しかしミョウバンは女の像をいくつか作っていたため

盛大に迷ってしまうのだが、

二人はそんなことを知るはずがなかったのだった。

気の所為です

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ