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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.33

 そんな私の頭上に、フリューゲルの声が静かに降り注ぐ。


「でも、いつもアーラのそばにいて、アーラの健康を、アーラの心の平穏を、アーラの日々の幸せを、祈り見守ることはできるよ。だって、それがきみの守護天使たる僕の務めだからね」


 フリューゲルの声に私が顔をあげると、私を愛おしそうに見つめるフリューゲルの視線とぶつかった。私を見るフリューゲルの顔には、温かな笑みが広がっていて、それは隣に立つ司祭様の慈愛に満ちた笑みとそっくりだった。


「フリューゲルってば、何だか司祭様みたい」


 彼の笑みにつられて私が口元を綻ばせると、フリューゲルはチラリと司祭様に視線を向けてから、照れたようにはにかんだ。


「僕はまだまだ司祭様には遠く及ばないけど、いつかは司祭様のように皆を導けるような天使になりたいと思ってるからね。そのためにも、まずはアーラの守護天使というお役目をしっかりと果たすよ」


 私の目を見て、決意を伝えるようにしっかりと頷くフリューゲルが頼もしく感じられた。これまで足並みを揃えていたと思っていた双子の片割れが、急に大きく見えて、私は目を丸くして彼を凝視した。


 ほんの少し離れていただけなのに、ほんの少し違う経験をしただけなのに、私達のこれからは、こんなにも違う道になってしまったのかと寂しさを感じずにはいられない。しかしそれとともに、私もしっかりと前を向いて進まなければ、大きく成長した双子の片割れに、差をつけられてしまうという焦りにもにた負けず嫌いな一面が、私の中でむくむくと頭を擡げてきた。


「そう。じゃあまずはしっかりと私の守護、よろしくね。守護天使様」


 私の言葉に、フリューゲルは顔を輝かして、任せておけと言わんばかりに大きく頷いた。


 そんな私たちのやり取りを静かに見守ってくださっていた司祭様に、私は向き直る。


「アーラ。ご理解いただいたのですね」


 安堵を見せる司祭様に、私は苦笑いを返しながら答えた。


「全てを理解したわけではありませんが……。私には、やはり神様のことも大樹様(リン・カ・ネーション)のお考えもよく分かりません。でも、自分が本来あるべき場所に戻らなければいけない、戻るしかないということは何となく分かりました。それを受け入れずに、ジタバタしても天使様となったフリューゲルと大きく差がついてしまうだけで悔しいですし、私は、私の為すべきことを受け入れようと思います」


 司祭様は嬉しそうに微笑むと握っていた私の手に力を込めた。

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