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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.32

 司祭様のお言葉に私は口を噤む。静かになった私を慰めるように、司祭様は私の掌を撫でた。


「貴方ともうすぐお別れしなくてはいけないことを(わたくし)はとても寂しく思います。ですが、私はこれからも貴方のことをずっと見守り続けます。遠く離れていても、必ず見守っていますからね。それに……」


 司祭様のお言葉に軽く首を傾げると、司祭様は、にこりといつもの柔和な笑みを湛えた。


「貴方は一人ではないのですよ」

「えっ?」

「貴方のおそばには、いつもフリューゲルがいますから」


 予想外の言葉に、思わず大きな声が出た。これからもフリューゲルがそばにいるとは一体どういう意味だろうか。


「あ、あの……。フリューゲルがそばにいるとは、どういう意味でしょうか?」


 Noelでなくなる私はもう庭園(ガーデン)と関わり合いのない存在になってしまうのだと思っていたのだが、そういうわけではないのだろうか。しかし、下界に暮らす人たちが庭園と交流を持ったという話など、これまでに聞いたことがないように思うのだけれど。


 混乱で瞬きを繰り返す私の視界の中に、満面の笑みのフリューゲルが映りこんだ。


「僕がこれからもきみのそばにいる理由。それは、僕がきみの守護天使になったからだよ」

「守護天使?」

「そう。天使になった僕は、アーラの守護天使になってそばにいることを決めたんだよ」

「決めたって……」


 フリューゲルは自信満々に胸を張る。その瞬間、彼の頭上で金の環がキラリと光った。まだ見慣れない綺麗な背中の羽をパサリと広げたフリューゲルは、嬉しそうにニコニコとしている。そんな彼に、私は驚きと呆れの混じったような声を返し、ちらりと司祭様へ視線を投げる。私の視線に気がついた司祭様は、柔和な笑みを崩さずに静かに頷いた。どうやらフリューゲルが私の守護天使になるという話は本当のことのようだ。


「守護天使って、一体何をしてくれるの?」


 少しだけ意地悪な質問をしてみる。だって、そばにいてくれるって言っても、私が下界の人になってしまったら、きっと私にはフリューゲルの姿は見えなくなってしまう。そんなのは、いないのも同然。私は、そんな分かりきった答えを胸に抱きつつも、挑戦的にフリューゲルを見つめた。


「何もしないし。何もできないよ」


 ほら、やっぱりね。私の予想通り、フリューゲルは小さく首を振った。そんな答えになることは初めから分かっていたのに、寂しくなって、私は俯いた。

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