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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.30

「ココロノカケラの昇華とは、願いを叶え、切り離されてしまった本来の魂の元へ戻ることを意味します。魂は、正しい形でないと次の生へと生まれ変われませんから」

「じゃあ、私は? 私はどうなってしまうのですか? 司祭様」

「貴方が白野つばさのココロノカケラである以上、本来の魂の元へ戻ることになります。それが、融合であり、貴方の場合は昇華になるのでしょう」


 そこまで言うと、司祭様は視線をスッと動かしお顔を伏せてしまわれた。いつものような穏やかな笑顔はそこにはなく、それが私の心をヒヤリと冷たくした。


「そんな。私は、消えてしまうと言うことですか?」


 強い声を出して反発心を露わにした私は、あろうことか、司祭様の肩をガシリと掴み揺さぶった。そんな私の失礼な態度にも司祭様は嫌悪感を表すこともなく、ただされるがままになっていた。


 そんな私の腕にそっと手をかけて、私を止めたのはフリューゲルだった。見ると彼の顔にも哀しそうな翳りが色濃く表れていた。


「アーラ。駄目だよ。司祭様は何も悪くないんだから」


 フリューゲルは哀しそうに首を振る。行き場がなくなり焦燥感に包まれた私の腕は、掴んでいた司祭様の肩からズルリとずり落ちた。そのまま、ボスリと落ちた先にあった布団をきつく握りしめる。


 手に力を入れれば入れる程に、私の目からは涙がこぼれ落ちた。私を包む布団には次々と小さな染みができていく。


「フリューゲル。私は消えてしまうの?」


 私の涙交じりの問いかけに、フリューゲルは無言で答える。


「……下界へなんて来なければ良かった。白野つばさになんてならなければ……」


 悔いだらけの私の零した言葉をフリューゲルはそっと拾い上げた。


「それは違うよ、アーラ。きみは本来はこちらの世界で生きていくはずだったんだ。それを僕がきみと離れたくなくて、天界へと連れてきてしまったから……」


 フリューゲルの言葉に私は、涙に濡れた顔を勢いよくあげた。


「違う。フリューゲルのせいじゃない。私もフリューゲルとずっと一緒にいたかったの。だって、あなたは私の片割れだもの」


 私の言葉に、フリューゲルは嬉しそうな、しかし、どこか哀しそうな笑顔を見せる。


「貴方方のどちらが悪いということはありませんよ」


 互いに庇いあう私たちの間に、司祭様のお声がそっと落ちた。私たちの視線が司祭様へと向けられる。その視線をしっかりと受け止めた司祭様のお顔は、もう曇ってはいなかった。

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