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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.29

「だから、あなたはあの時、私とあの子が惹き合ったと言ったのね。フリューゲルは、私がココロノカケラだと知っていたから」

「うん。僕と司祭様は、僕たちの記憶の意味を考えたんだ。そして、アーラが本体である白野つばさから分かれてしまった彼女の一部であると結論付けた」

「アーラが他のNoel(ノエル)と違い、下界に強く惹かれていたのは、きっと本体である白野つばさの心が貴方を呼んでいたからなのでしょう」


 私は、フリューゲルと司祭様の声をどこか遠くに聞きながら、胸に溢れかえる想いの渦に飲み込まれていた。


 旅先で両親とともにのんびりと過ごしたこと、お父さんに反発して家を飛び出したこと、そんな私を心配して家の外で帰りを待ってくれていたお母さんの温かい腕の中。


 アーラである私には経験したことのない思い出が、記憶が、心の中を渦巻く。今なら分かる。これは、白野つばさの記憶だ。


 そうは思うのだが、私が私でないと言われてもそんなに簡単には受け入れられない。しかし、受け入れたくない事実に逆らったところで、私の心の中には、下界での幼少期からの記憶が次から次へと溢れ出してきている。記憶の渦に飲まれながら、私はぼんやりと司祭様を見上げた。


「司祭様。先ほど仰られていた、記憶の融合とは一体どういうことでしょうか?」

「本体である白野つばさと彼女のココロノカケラである貴方が一つになり始めているということです」

「一つに?」

「そうです。しかし、それは当然のことと言えるでしょう。今現在、貴方は本体である白野つばさの体に宿り下界で活動しているのです。本体とココロノカケラである貴方が同じ器に宿っているのですから」


 司祭様の淡々とした説明が頭の中で繰り返される。本体である白野つばさ。器を借りた私。本体とココロノカケラの融合。聞き慣れない言葉は、山彦のように私の中で響きわたり、波紋のように混ざり合い大きくなっていく。


 自分の中に響き渡る言葉たちにぼんやりと対峙していた私は、突然雷に打たれたかのようにびくりと身体を震わせた。


「司祭様。ココロノカケラの昇華とは……」


 今度はしっかりと司祭様の目を見て問いかける。できることなら、私の今感じている不安を拭うようなお言葉が欲しい。縋るような視線を司祭様に送ると、私の意図に気がついたのだろうか、司祭様がお顔を曇らせた。

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