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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.28

 司祭様の慈愛に満ちた眼差しに思わず照れ笑いを浮かべる。下界へ来てからの自分の頑張りが認められたような気がして、心がじんわりと温かくなった。そんな私を見て、司祭様は困ったようなお顔になった。


「あの、司祭様?」

「アーラの成長はとても喜ばしいことなのですが……、実は、学ばねばならない者は貴方ではなかったようなのです」


 眉尻を下げてひどく言いにくそうに司祭様は口籠った。


「え?」


 司祭様のお言葉の意味が理解できなくて、私が呆けたままの顔で固まっていると、司祭様の横でフリューゲルが、まだ見慣れない背中の大きな羽をパサリと開いた。それに気を取られ彼の方へ視線を向けると、じっと見つめてくるフリューゲルの視線と重なった。


「本来、学びを行うのは、僕だったんだよ」

「フリューゲルが?」

「そう。『時、来たりしとき、片翼を学ばせよ』の片翼は、僕のことを指していたんだ。そして、『時、来たりしとき、片翼を羽ばたかせよ』の片翼は、きみのことだよ。アーラ」

「私?」

「うん。大樹様(リン・カ・ネーション)のお言葉は、僕の成長と、アーラの昇華を意味していたんだ」

「昇華? 私の昇華ってどういうこと?」


 今や泣きそうになりながら私は、彼に答えを求めた。双子の片割れにも哀しみの影が落ちている。


「アーラは、僕が天界へと連れてきてしまった、白野つばさの《《ココロノカケラなんだ》》」

「私が、ココロノカケラ?」


 自分の顔を指差しながら、私はこれでもかと目を見開いた。きっと今の私はこれまでで一番間抜けな顔をしているに違いない。でも仕方がない。だって、フリューゲルの悲しそうな、それでいて真剣そのものの眼差しを真っ直ぐに受ければ、それが嘘や冗談であるはずないことくらい分かってしまう。でも、だからこそ私はその話をどうやって受け止めれば良いのか分からない。


「あの時、僕たちが母さんのお腹の中で別れた時に、僕はきみの流した涙を手にしていた。それにきみの魂の一部が宿ったんだ」

「そんな事って……」


 信じられないと首を振る私に、フリューゲルは淡々と話しかける。


「あり得ないことではないよ。まぁ、通常ココロノカケラはこちらの世界に未練があって留まることの方が多いけど。きみも実際にココロノカケラに会っているんだから、その存在は信じられるだろ?」


 フリューゲルの言葉で、学校の花壇で出会ったまだ幼い少女の顔が脳裏に浮かんだ。

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