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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.25

「え? フリューゲルが助けてくれたの? でも、フリューゲルはNoel(ノエル)で羽はない……いや、でも今は天使様になったから、羽があるわけで……いやいや、でも春の時はNoel(ノエル)で……? え?」

「あはは。混乱しているみたいだね、アーラ」

「ちょっと。笑うことないでしょ。しょうがないじゃない。訳が分からないんだから」


 状況がよく分からなくて混乱している私を見て、フリューゲルは可笑しそうに声をあげて笑う。そんなフリューゲルに向かって私は唇を尖らせた。


「ごめんごめん。そうだよね。分からないよね。僕も初めは混乱したから無理もないね」


 フリューゲルは一頻り笑ったあと、何とか緩んだ頬を引き締め真面目な顔になる。


「司祭様がおっしゃった通り、アーラを助けたのは、春も今回も僕だよ。アーラに会いに下界へ降りた春のあの日、木材がきみ目掛けて滑り落ちるのを見て、助けなくちゃと強く思った。そしたら、僕は天使の力を使ってきみを守ることが出来たんだ」

「それじゃあ、あの時にフリューゲルは天使様になったの? だったら、どうして隠してたのよ?」

「隠していたわけじゃないんだ。僕は、ただ必死だった。きみを守りたくて。だから、天使の力を使えたのはあの時だけで、それからは僕は元のNoel(ノエル)だったんだ」

「そう……なの。不思議なことがあるのね」


 Noelから天使への成長については、私たちには教えられていない。だから、フリューゲルに起きた出来事も、それが正しい成長過程なのか、そうでないのかを私が判断することはできなかった。ただ、Noelである私には、やっぱり羽もなければ金の環もないし、そんな私が天使様のように不思議なご加護の力を使うことも出来ないのだから、これまで私と同じようにNoelの姿だったフリューゲルが、一瞬とは言え天使様の力を使うことが出来たというのは、やはり不思議なことだった。


「それからは、アーラも知っている通り、僕はNoelの姿のまま、いつもきみのそばにいた。きみが下界の人たちと交流を持ち、少しずつ変わっていく姿を近くで見守っていた」

「いつもじゃないわよ……」


 フリューゲルの言葉に、私は小さな声で反論した。その言葉の意味を汲み取ってか、フリューゲルは少し寂しそうに顔に影を落として頷いた。


「うん。あの、秋の日のことだよね。そのこともアーラにちゃんと話さなくちゃね」

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