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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.24

 司祭様の問いかけに、私は周りを見回した。周囲は白を基調とした壁で覆われており、一カ所だけ切り取られたかのように暗い窓からは、うっすらとした光が入り込んでいる。ふかふかの布団の中で自身を見下ろすと、腕に細い管が繋がれていた。さっきまでは気がつかなかったが、微かに鼻を突くような臭いが漂っている。


「ここは……病院?」


 私は、病院など来たことがない。それなのに、何故だかその言葉が口からポロリと零れ落ちた。司祭様は、その言葉をまるでそれが当たり前とでも思っているかのように静かに受け止めた。


「そうです。やはり、記憶の融合が始まっているのですね」

「あの、司祭様? 記憶の融合とは一体、何のことですか?」


 相変わらず司祭様のお言葉は私には難しい。軽く首を傾けていると、フリューゲルが私の肩にポンと手を置いた。


「僕から話すよ。約束だったしね」


 フリューゲルの手の重みを肩に感じながら、フリューゲルの顔を見上げる。なんだか羽と金の環があるだけで、フリューゲルはフリューゲルじゃないみたいだった。


「まず、アーラはどうしてここに、病室にいるか分かっているかい?」

「それは、私、車に轢かれそうになって……あれ? でも、どこも痛くないかも……」


 先ほど鮮明に思い出した光景に身震いをしながらも、自身の体のどこにも傷がないことを確かめる。不思議に思い、あの時の光景を必死に思い出そうとしていると、脳裏に白い光とたくさんの羽根が舞う光景が甦った。


「そうだ……羽根。私、車に轢かれる直前、たくさんの羽根に包まれたんだ。それで、ああ、司祭様がまた助けてくれたんだって安心したんだ」


 司祭様に向き直り、私は深々と頭を下げた。


「司祭様、助けていただきありがとうございました。今回だけではなく、まだ下界へ来たばかりの頃にも、木材の下敷きになりそうだったところを助けていただきました。あの時も、気を失う寸前にたくさんの白い羽根をみて、司祭様が助けて下さったんだと思ったのに、お礼も申し上げず失礼しました」


 そう感謝の言葉を述べた私を、司祭様は困った顔で見つめる。


「アーラ、それは(わたくし)ではありませんよ。(わたくし)は最初にお約束した通り、庭園(ガーデン)から貴方を見守っていただけです」

「え? でも……」


 困惑する私に、司祭様は意味ありげに目配せをする。自身の隣に立つフリューゲルへと視線を流す司祭様の視線の意味に少しばかり遅れて気がついた私は、思わず驚きの声をあげた。

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