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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.17

「あ、青島くんとのこと?」

「俺と付き合ってくれ!」

「つ、付き合う?」

「俺じゃ、ダメか?」


 キリリとして大人びて見える青島くんの顔が、少しだけ陰る。


「ダメじゃない!」


 青島くんのそんな顔を見ていたら、思わず言葉が口を突いて出てしまい、慌ててパッと口元を押さえた。心臓が今にも壊れてしまうんじゃないかと言うくらいに、ものすごい速さで鼓動をしている。とても息苦しい。


「ダメじゃないよ。青島くんはいつだって優しくて素敵だなと思う……。思うけど……。私、まだ付き合うとかよく分からなくて」


 頭を振って、それだけを一息に言うと、私は小さく息を吐いた。


 そんな私に合わせるかのように、青島くんも大きく息を吐く。それから、大きく息を吸う音がした。


「そっか。わかった。俺、待つよ」

「え?」


 青島くんの言葉の意味が分からなくて首を傾げると、青島くんは、ニッといつもの笑顔を見せる。


「だって、今の白野の言葉を聞く限り、俺のことは嫌いじゃないみたいだし、もしかしたら、俺、脈アリなんじゃないかって思えたから。今日のところは、白野の気持ちが落ち着くのを待った方がいいかなと思って。戦略的撤退ってやつさ」


 少し戯けて肩をすくめた青島くんの姿に、思わずクスリと笑ってしまう。自分の気持ちを押し付け過ぎず、相手のことを思える彼のそんなところが、やっぱり素敵だなと思う。


「まぁ、ゆっくり考えてよ。俺、待つからさ」


 青島くんはそう言って、止めていた足を再び動かし始めた。私は、もう一度小さく深呼吸をすると、少し先に行ってしまった彼の背中をパタパタと追いかけた。


「あの。ありがとう」


 青島くんに追い付き、そう小さく言うと、彼も「うん」と小さく頷いた。そのあとは、沈黙が二人の間をゆったりと流れていった。それは決して息苦しいものではなく、むしろ、ただ一緒に歩いているだけだというのに、私の心はポンポンと飛び跳ねるように弾んでいた。


 しばらくして、ふとあることが気になった。


「あの、青島くん? 聞いてもいい?」

「うん?」


 私の問いかけに、青島くんがのんびりと反応した。


「いつから、その……私のことを?」


 気になって聞いてみたものの、言葉にした途端、また心臓がドキドキと鳴り出した。なんだか顔も体も熱い。突然居心地が悪くなった気がしてモジモジとしていると、そんな私を見て、青島くんはニヤリと笑った。


「いつからだと思う?」

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