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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.12

「みゃ、脈あり?」


 私の素っとん狂な声に、緑はアハハと声をあげて笑う。一頻り笑った後、目元に滲んだ涙を指先でスッと拭いながら、少しだけ真面目な顔を作った。


「私は、つばさちゃんのそういうピュアなところ大好きだけど、今日は、一つお節介なこと言っちゃうね」

「お節介?」

「そろそろヒロくんの視線に気づいてあげなよ」

「青島くん……の?」

「そ。そうしたら、きっとつばさちゃんの毎日は、今よりもキラキラして楽しくなるからさ」


 緑の言葉は、いつも少しだけ分からない。相変わらず私が首を傾げていると、そんな私に緑はいつもの笑顔を見せた。


「ま、今は分からなくてもいいよ。ただ、心の片隅にでも、今の話を留めて置いてよ」

「う、うん。アドバイスありがとう。私、これからしっかりと青島くんのこと見るね」


 答えた私を何故だか苦笑気味に見やりながら、緑は手を振り校内へと戻っていった。


 青島くんか。彼と友人になってから、それなりに彼のことを見てきたつもりだったけれど、どうやら、それでは足りないらしい。彼の視線に気づいたらこれまでよりも楽しくなるって、それって一体どういうことなんだろう。青島くんが私を楽しませてくれるのだろうか。それならば、今だって十分に楽しませてもらっているけど。


 正解が分からず悶々と考えていると、コソコソとした話し声が耳に入ってきた。


「天使様。もしかして、センパイは今の話、分かっていないのですか?」

「う~ん。どうやら、そうみたいだね」


 女の子がフリューゲルに耳打ちをするようにそう言うと、フリューゲルはそれに深く相槌を打っていた。


「ちょっと。二人とも。聞こえているわよ。ってか、フリューゲルだって、どうせ今の緑ちゃんの話、分かっていないでしょ!」


 私がビシリと指を突き付けると、フリューゲルは、すまし顔でそっぽを向いた。そんな私たちのやり取りに、女の子は、目を丸くする。


「天使様たちは、実はかなりの鈍感さんなのですね」


 ボソリと漏れた私たちに対する感想に、そっぽを向いていたフリューゲルもピクリと反応を示す。


「僕は、アーラよりはちゃんと分かってるよ」

「本当に? じゃあ、どういう意味だったのか、言ってみてよ」


 売り言葉に買い言葉。私に分からないことが、フリューゲルに分かるはずがない。それなのに、フリューゲルは意地をはる。


「いいけど? でも、本当にいいの? 僕が言っちゃったら、アーラ困らない?」

「こ、……困らないわよ」

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