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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.10

 ひとしきり笑った後、まだクスクスと笑いを残している私の顔を、緑は覗き込んできた。


「つばさちゃん、何かいいことでもあったの?」

「え?」


 緑の言葉に、私が口元を緩めたまま小首を傾げると、それを見た緑がどこか安堵した表情を見せる。


「だって、今日のつばさちゃん、楽しそうだから」

「楽しそう?」


 私は自分の顔を指さす。あまり自覚がなかったので、はてと考えるようなそぶりをしてみせた。


「うん。だって、つばさちゃん秋の終わりくらいから元気がなかったでしょ? クリスマスも初詣も、どこかつまらなさそうというか、心ここに在らずって感じで。でも、無理して楽しもうとしているような感じもしてたから、何か言えない悩み事でもあるのかなぁって気になってたの」

「緑ちゃん……」


 私は、緑の言葉に驚いた。フリューゲルがいなくなってからの私は、何をしても楽しくなかった。何かを特別に感じることもなかった。心のどこかにぽっかりと穴が開いてしまって、その穴から私の気持ちはすべてがこぼれ落ちていた。でも、フリューゲルの事は、私にはどうすることも出来ないのだからと自分に言い聞かせ、周りに心配をかけないよう明るく振舞っていたつもりだった。しかし、どうやら下界人1年生の私では、上手く振舞えていなかったようだ。


「あの……心配かけてごめんね」


 私が頭を下げると、緑は慌てて手を振った。


「違うの。責めてるとかじゃないから誤解しないで。私が勝手につばさちゃんに元気がないなって、気にしていただけだから」

「うん」

「でも、元気がなさそうとはいえ、出会ったころに比べたら、つばさちゃんの心の声が表面に出てきていて分かりやすくなってたから、様子を見て、どうにも1人じゃ抱えられそうになくなったら、声をかけようと思ってたの。その判断ができる程度には、私はつばさちゃんのこと見てるんだぞ」


 えへっと笑う緑の笑顔に、私の胸はじんわりと温かくなった。


「本当に心配かけてごめんね」


 私はもう一度頭を下げた。それから、ニッと笑って見せた。


「緑ちゃんの言う通り、ちょっと悩んでいたんだけど、さっき解決したの。正確には、まだ完全に解決したわけじゃないけど、でも、もう大丈夫」


 私はそう言って、少し離れたところに居るフリューゲルへチラリと視線を向ける。その視線に気がついたフリューゲルが、コクリと頷いた。

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