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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.9

 それから私たちはガーデニング作業を開始した。とは言っても、専ら動いているのは私だけ。女の子はフリューゲルに捕まり、色々と質問攻めにあっている。


 自分の存在がわかる相手がいることが嬉しいのだろう。フリューゲルの口の端は、上がりっぱなしだ。


 そんなフリューゲルの姿を見て、私が一人クスクスと笑いながら作業を進めていると、私たちのいる中庭に一際元気な声が響いた。


「あ! いたいた。つばさちゃーん」


 緑が、声を上げながら駆け寄ってきた。私は作業の手を止めて、緑に笑顔を向ける。


「緑ちゃん、どうしたの?」


 緑は私のそばまで来ると息を弾ませながら、満面の笑みを見せた。


「つばさちゃん、そろそろ部活終わる? さっき聞いたんだけど、駅前に新しいお店ができたんだって。アイスクリーム屋さん。みんなで行ってみようって話になってるの。つばさちゃんも一緒に行ってみない?」

「え?」


 突然の誘いに、思わず返答につまる。いつもならば、ひと通りの作業を終えている頃だ。緑はそれが分かっているから、私を呼びにきたのだろう。


 しかし今日は、ずっと話しっぱなしで、やっと作業を始めたばかり。花壇には、まだほんの少ししか肥料が撒かれていなかった。


「あ〜。ごめん。今日は、作業始めるの遅くなっちゃって、これからなんだよ。まだしばらく時間かかると思うの」

「そんなぁ」


 緑は残念そうに眉尻を下げた。


「私、手伝おうか? そしたら、一緒にいける?」


 そんな提案までしてくれたが、私は軽く首を振った。


「ありがとう。でも、大丈夫だよ。みんなを待たせたらいけないし、緑ちゃんだけ行ってきて」

「そお?」

「うん。今度、どんな感じだったか教えて」


 私たちがそんな話をしているそばで、フリューゲルと女の子は、こちらの会話が気になるのか、何やらソワソワとしている。


 二人の顔には揃って、「アイスが食べたい」と書いてあるようだった。言ってしまえば、この世ならざる者たちなので、食べる行為など必要としないくせに。食い意地の張り付いたその顔に、思わずクスクスと笑いが溢れてしまう。


「まだ寒いし、アイスなんて食べてお腹壊さないようにね」


 浮かれた気持ちのままに、緑に茶々を入れてしまった。そんな私の言葉に、緑は軽く頬を膨らませる。


「あ〜。つばさちゃんってば、そんなこと言うの?」


 それから、堪えきれないとばかりに、プッと吹き出しながら、緑もケラケラと笑う。

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