表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

71/114

冬の章 p.6

 そんな私を、フリューゲルは可笑そうに見ている。


 あの時突然私の前から姿を消したフリューゲル。どんなに呼んでも私のそばに来てくれなかったのに、今、目の前にしれっと立っている。


 その姿が以前と全く変わらないような気がして、だんだんと腹が立ってきた。


「あなたね。何なの。いきなり現れて。私がどれだけ心配したと思ってるのよ」


 私の剣幕にも怯むこともなく二ヘラと笑ったフリューゲルの笑顔に、さらにイラつきが増す。


「何で笑ってるのよ?」


 睨みを効かせて、ふにゃりとした笑顔を弾き返すが、そんなことすら気にする様子がない。


「あはは。アーラ、上手に怒るようになったね」

「もう、本当に何なのよ!」


 握り拳を一振りして、ダンと足を踏み鳴らす。


「あれ? ムッキーじゃなくていいの?」


 相変わらずのフリューゲル。のんびりしているのは彼らしいけど、今はまるで真実をはぐらかされているようで、なんだか余計にイライラとする。


「揶揄うのはやめて。私は本当に心配したのよ。あんな別れ方をして……」


 イラつきが頂点に達した私の目からは、ポツリと涙が落ちた。一粒落ちてしまうと、その後は、次から次へと涙の粒が頬を伝っていく。


 ようやくフリューゲルの声から戯けた色がなくなった。


「ごめん。あの時は、僕も混乱してしまって……」

「どこに行っていたのよ?」


 鼻をグスッと鳴らして、私は、フリューゲルにジト目を向ける。


「あの後、僕は庭園(ガーデン)に戻ったんだ。しばらくは一人でじっくりと考えて、その後、司祭様にお考えを聞いてみたんだ」

「ふ〜ん。それで? 司祭様はなんて?」


 私は話の先を促したけれど、フリューゲルは困ったように眉根を寄せた。


「ああ。うん。その話の続きをこのまましても良いんだけど、アーラは作業の途中だったんじゃないの? それ、大丈夫?」


 フリューゲルが私の足下を指すので、つられて視線を下へ向けると、思わず声が漏れた。


「ああ。肥料!」


 落とした拍子に袋が破れてしまったのだろう。茶色の土に似た肥料が床に溢れ出ていた。


「やばい!」


 庫内の隅へ行き、箒とちりとりを手にすると、肥料を掻き集めるために、床を掃く。埃と砂の混じった肥料を掃き集め、ちりとりに収めた。


 まぁ、これでも花壇に撒くには問題ない。仕方ない。これを使おう。肥料だってタダじゃない。無駄には出来ないのだ。


「あのさ。話の続きを聞きたいけど、今は、こっちをやらなくちゃ。あ、そうだ。相談したいことがあったの」

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ