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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.2

 最近は、春に向けて、花壇の整備を重点的に行うようになった。秋から冬の間に茶色い土が剥き出しになってしまった花壇を、ふかふかの土になるように掘り起こす作業の毎日だ。


 1年の間に固くなってしまった土を柔らかくするため、水をかけて解してから掘り返す。必然的に泥だらけとなるため、部活中はジャージに着替える。


 まるで放課後の運動部員のようないでたちで、軍手とジョウロを手に、今日作業をしようと決めていた中庭へ行くと、先客がいた。


 制服姿の女の子と男の子が花壇の前に座り込んでいる。小さな背中からすると、中等部の生徒だろうか。


 この学校は中高一貫校で、同じ敷地内に高等部の校舎が2棟、中等部の校舎が1棟、それぞれ建てられており、中高を区切るようにして、今いる中庭が作られている。


「その花壇がどうかした?」

「あ……っと……いえ」


 私が声をかけると、男の子の方が慌てふためいて振り返った。女の子の方は、私の存在などどうでもいいのか、花壇から目を離さずにいる。


「あら、あなた……」


 女の子から何か変わった気配を感じ、私は思わず彼女を凝視した。しかし、きっと人ではない私だからこそ気づいたことだ。そばにいる男の子の様子からそれを悟った私は、それ以上のことをこの場で口にすることをやめた。


 不自然に言葉を切ってしまったことを取り繕うように私は、優しくみえるよう笑みを浮かべて再び尋ねた。


「そこの花壇が気になるの?」


 男の子は、チラリと女の子を見てから口を開いた。


「えっと……、先輩? は、ここの手入れをする人ですか?」


 ジャージに入っている学年別のカラーの部分を確認したのか、男の子は、少し丁寧な口調だった。


「そう。私、園芸部なの。ここの管理は、私がしているけど?」

「あの、えっと……この花壇って、何か育ててます?」


 男の子は、女の子が見つめたままの花壇を指さしつつ、困ったように聞いてきた。


「なになに? もしかして、園芸に興味あったりする? 何か育てたい感じ?」

「ああ、いえ、そうじゃなくて……」

「違うの? 残念。新入部員ゲットかと思ったのになぁ。あ、でも、きみたち、中等部? 中等部でも、入部ってできたかなぁ」


 入部希望ではないと分かってはいたが、花壇を食い入るように見つめる女の子のことをもう少し知りたくて、その場を引き伸ばすために私は、少々強引に会話を進めた。

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