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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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冬の章 p.1

《二月二十七日 金曜日 はれ》


 フリューゲルが私の前から姿を消してから、華やかなクリスマスを過ごし、年越しを静かに迎え、新年の挨拶をしてお年玉をもらった。


 それを持って、緑と近所の神社へ初詣に行き、私は必死で神様に願い事をした。願い事はもちろん、早く庭園(ガーデン)に戻れますように。大樹が元気になりますように。そして、フリューゲルとまた会えますように。


 少々欲張りすぎかもしれないが、どれも私にとって切実な願いなのだ。全て神様に聞き届けてもらわなくてはならない。そのために、お賽銭もフンパツした。


 あまりに必死に拝んでいたからか、先に参拝の終わった緑に、一体どんな願い事をしたのかと、しつこく聞かれることになった。しかし、こればかりは、話すわけにもいかないので、愛想笑いで何とか誤魔化した。


 その後、境内で無料で配っていた温かい甘酒をもらい、キンキンに冷えた体を温めていると、友人と初詣に来ていた青島くんに出会った。


 彼とは、あのコンビニの夜以降も何度か顔を合わせているが、これと言って深い話はしていない。いつも、「よっ」と手をあげて軽く挨拶をしてくれたり、「寒いから部活に行きたくない」と小さく零す愚痴を聞いたりしたくらいだ。


 仲間内でワイワイと甘酒を楽しみ、誰かの提案で、皆でおみくじを引くことになった。おみくじには神様からのメッセージが書かれているのだと聞いて、私は目を皿のようにして、小さな紙切れの隅から隅までを漏らさずに読んだ。


 ほとんどは何を意味しているか分からないようなお言葉だったけれど、『願い 叶う』と書いてあったので、それだけで私は満足だった。


 全ての願いが叶うのか、それともどれか一つだけなのかは分からなかったけれど、私は、その時が来るのを、今か今かと待ち構えていた。


 それなのに、未だにその気配はない。


 新年を迎えてあっという間に2カ月が過ぎようとしている。フリューゲルの姿を見なくなってからは、もう3ヶ月以上が過ぎていた。


 今日は寒さもだいぶ緩み、春はもうすぐそこまでやってきていると感じさせるような、木漏れ日がキラキラと輝く晴天だ。


 最近は、寒かったり、暖かかったりを繰り返している。私の好きな彩り豊かな春はもう間も無くだろう。


 そして、あと1か月もすれば、私が下界へ来てから1年になる。1年間で私が学んだことと言えば、少しだけ園芸が得意になったことと、以前よりも感情が豊かになったことくらいだ。

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