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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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秋の章 p.18

「大丈夫。心配しないで。僕はいつだって君のそばにいるよ」


 私が言おうとした言葉が、フリューゲルの口から零れ落ちた。


 今度は私が目を見開く番だった。驚きのあまり、そこから先の言葉が出てこない。ポカンと口を開けていると、フリューゲルが何かを確かめるかのように、ゆっくりと言葉を噛みしめながら話し出した。


「僕はあの時、神様に僕だけ一緒に来るようにと言われたんだ。手を離すようにって。僕が手を離すと、あの子は必死で僕を探していた。だから、もう一度あの子の手を握って、そう言ったんだ。そして、あの子がうまく光の海流に乗れるようにあの子の背中を力いっぱい押した」


 フリューゲルの言葉をどこか遠くに聞きながら、私は目の前のフリューゲルに手を伸ばした。フリューゲルは、さっきまでのお母さんのように寂し気な笑みを張り付けている。


 私の目からは、いつの間にか雫が零れ落ちていた。いくつもいくつも雫が零れ落ち、私の頬を濡らしていく。


「あなたと離れてしまって、私、泣いてた。私の涙が海流を漂って……その私の涙をあなたが掬ったのを見たわ」


 私の言葉にフリューゲルは小さく頷いた。


「そばにいると思っていたあなたの姿が離れて行ってしまって、私、大きな声で泣いたの。泣きながら神様にお願いしたの。私たちを引き離さないでって。たくさん泣いて、たくさん神様にお願いしていたら、神様が許して下さったの。仕方がないな。お前にチャンスをやろうって。もう少しの間だけ、一緒にいるがいいって」


 フリューゲルの目にも雫が溜まっていた。Noel(ノエル)であるはずの彼の目に。


「フリューゲル。あなたは、私の弟なの? 私の片割れなの?」


 私の言葉にフリューゲルは、口元を少し緩めた。彼の頬を雫が伝い、ポトリとシーツの上に落ちた。


「アーラは僕の片割れだ。僕たちは一緒にいた」


 互いに涙に濡れた瞳で見つめ合う。私たちは同じ母親のおなかに宿った双子。いつの間にかそれは確信となって、私の胸に宿っていた。


 私たちが双子Noel(ノエル)として庭園(ガーデン)に生まれ落ちたのは、神様に一緒にいたいと願ったからだ。


 そう思ったところで、ふと疑問が頭をよぎった。


 私とフリューゲルが元々双子だったとして、じゃあ、あの写真は? あれは、本当に私たち?


 先程見たばかりのエコー写真が脳裏に蘇る。


 お母さんは、あの写真を私と双子の弟だと言っていた。そんなまさか。そんな事があるだろうか。

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