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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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秋の章 p.17

 隣に座るフリューゲルの膝頭を揺すっていると、私の手に彼の手が重ねられ、揺するのを止められた。


「僕、誰かと手を繋いでいたんだ」


 掌を見ながらぼんやりと言うフリューゲルに、私は、なぁんだと力が抜ける。


「それ。私でしょ? さっきのお母さんの話を聞いて、私も小さなNoel(ノエル)だった頃、フリューゲルとよく手を繋いでいたなぁって思いだしたもの」


 さすがは双子Noel。考えることまで似ていると笑う私に、フリューゲルは何か言いたそうな、思いつめたような顔を見せる。


「何? どうしたの?」


 フリューゲルのただならぬ雰囲気に、暢気に笑っていた私は思わず身構えた。


「そうじゃない。もっともっと小さな手で、僕は誰かと繋がっていたんだ」

「誰か?」

「そう。とっても近くに居た誰か。僕は暗闇の中をぷかぷかと浮きながら誰かと話したり遊んだりしていた……ような気がする」

「え? ちょっと待って」


 フリューゲルの話を遮った私は、こめかみに指をあてる。頭の中には、またあの景色が広がっていた。


 暗い水の中。ぷかぷかと浮く私。誰かと手を繋いでいる。繋いだ手の先に居るのは。そう。私の片割れだ。


 何故だか、今度はそう確信が持てた。


「私も、その場面を知っている……気がするの」


 私の言葉に、フリューゲルの瞳は、みるみる大きく見開かれていった。


「さっきお母さんの話を聞いた時に、そんな景色が突然思い浮かんだの。私は、暗闇の中で必死に手を伸ばして誰かの手を探していたの。いつもならすぐそばにあるはずなのに、あの時は、どんなに手を伸ばしても、触れることができなくて、私は声を上げて泣きそうになった」


 突然の私の話に、今度はフリューゲルが身体を固くしたのが分かった。それでも、私はそのまま話し続ける。


「でもその時、暗い水の中に一筋の光が差してきて、光の向こうから、呼ばれたの。早くおいでって。とっても優しい声だったから、私はその声のところへ行きたかった。でも一人ではいけない。だって私にはいつも一緒に居た片割れがいたから。だから、もう一度手を繋ごうと思って必死で手を伸ばしていたの」

「アーラ?」


 フリューゲルが何か言いたそうに私の名前を呼んだけれど、私は、構わず話を進める。私の頭の中にある景色を、私が今感じていることを、全て漏らさず言葉にしたかった。


「必死で片割れの手を探していたら、不意にあの子の声が聞こえたの」

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