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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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秋の章 p.10

 初めての焼き芋は、あっという間に食べ終えてしまった。


 今回は少しだけという約束だったので、名残惜しいけれど、私たちは、焚火の後始末をする。校長先生用の焼き芋を取り出して、燃えカスになった落ち葉を、スコップで少しずつ掬い取り、バケツの水の中へ入れていく。少し手間だが、こうして消火していくのが、安全で確実に消火できる方法らしい。そう教えてくれる青島くんはやっぱり物知りで、すごいと感心したら、片頬を掻きながら、大したことはないと、そっぽを向き受け流された。


 しっかりと水に浸かり消火された落ち葉のカスは、後日私が片付けることにした。しっかりと消火されているはずだが、万が一にも燃え残りが近くの草木に燃え移らないよう、二人で、バケツを用具庫へと移動させ、蓋をした。


 すべての片づけを終えて、青島くんと共に、校長室へ挨拶に行き、校長先生に焼き芋を手渡すと、完全に焼き芋パーティーは終わりである。秋の日暮れは思ったよりも早く、明るいうちに作業を終わらせようと話していたのに、私たちが家路につく頃には、空にはいくつかの星が瞬いていた。


 「暗くなっちゃったから、家まで送るよ」


 青島くんのその言葉に心を擽られたような気がした。まだ彼と話していたい。しかし、家まで来てもらっては、彼の帰りがさらに遅くなってしまうことに気が付いて、私は頭を振った。


「ううん。大丈夫。送ってもらったら青島くんの帰りが遅くなっちゃうし。でも、途中までは一緒に帰ろ」

「そうか」


 私たちは、肩を並べて校門を出る。実は、こうして青島くんと帰るのは初めてだった。いつもはそれぞれの部活の終了時間が違うし、部活のない時でも、私は緑と、青島くんは部活の仲間や同性の友人と帰るので、二人だけで帰る機会がこれまでなかったのだ。


 先ほどまでは途切れることなく話をしていたのに、なぜだか青島くんは口を噤んだまま私の半歩先を歩いていく。早すぎず遅すぎず。ずっと半歩の距離を保ちながら無言のまま歩く。彼との会話は、いつも心地良いのだが、こんな無言の時間も心地が良いのだなと思いながら、私は彼の影を追いかけた。


 ふいに、青島くんが立ち止まり、振り返る。あっという間に分かれ道へと来ていたようだ。心地良い時間も、もう本当に終わりだ。寂しいが、仕方がない。私は、青島くんに笑みを見せた。


「今日はありがとう。とっても楽しかったし、美味しかった」

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