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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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秋の章 p.8

 その言葉に、青島くんの瞳がまた揺れた。


「白野は、それで本当に良いと思っているのか?」

「うん。思ってるよ。でも、これからは彼女に青島くんの気持ちをきちんと示そうよ。どんなに突き放すことになっても、それが彼女に対する優しさだと思うよ」


 私の言葉を噛みしめるようにじっと黙っていた青島くんだったが、やがてニカリといつもの彼の笑みをみせた。


「白野ってすごいよな」

「え? 何が?」

「だって、嫌な思いさせられたのに、サラリと流してさ。仕返しとか考えてないだろ?」

「仕返し? そんなこと考えたことないかも」


 青島くんの言葉に思わず目を丸くしていると、そんな私の顔を見て、青島くんはプッと吹き出した。


「だよな。そうだと思った。白野はそういう奴だよ。心が広いというか。俺も見習わなきゃ」

「そんな。私、別に心広くなんかないよ。あの時も、ムッキーってしたし」


 木本から嫌がらせを受けたときの気持ちを思い出し、思わず両手で拳を握る。


「あはは。なんだよ。ムッキーって」


 青島くんは、腹を抱えて笑う。もう完全にいつもの彼だった。


「ムッキーっは、ムッキーっだよ。緑ちゃんに教えてもらったの。心の中にムカムカモヤモヤが溜まったら、ムッキーって吐き出せって」

「何それ? それ、怒ってんの? 全然怒ってないじゃん」

「ええ? だって緑ちゃんが……」

「葉山なぁ。あいつも、案外心広いからなぁ。感情表現豊な奴だけど、本気で怒ってるところは、確かに見たことないな」


 青島くんは私の隣で、腹を抱えたまま妙に納得したように頷いている。


「ええ? ムッキーって間違ってるの? 私、これで結構スッキリしたんだけど」


 顔の横で握ったままの両拳を震わせていると、青島くんはまだ笑いを含んだままで首を振った。


「白野の怒りがそれでスッキリしたのなら、間違っていないさ。木本への怒りも消えているならいいんだ。ただ」


 いつの間にか青島くんの顔から笑みは消え去り、代わりにものすごく真剣な眼差しが私を捉えている。


「もしもこれからまた白野がつらい思いをしたときは、俺に愚痴ってくれ。愚痴じゃなくてもいい。怒りでもいい。白野の心の中のモヤモヤを、俺に吐き出してくれ。俺はそれをちゃんと受け止めるから」

「え?……う、うん」


 正直、私は彼の言葉の意味を半分も理解していなかった。でも、彼の真剣な気持ちがすんなりと私の心の中に入ってきた。だから、コクリと頷いた。


「本当に何でも聞いてくれる?」

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