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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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秋の章 p.4

 私たち二人が、まだ見ぬ焼き芋に思いを馳せていると、胸の前で紙袋を抱えた青島くんがこちらへ駆けてきた。フリューゲルは、いつものようにスッと姿を消してしまう。まあ、それでもどこか近くにいるのだろうけれど。


「白野、お待たせ。先生にも許可取りに行ってたから遅くなった」

「ううん。全然。そっか、ごめんね。面倒くさいことさせて。先生にも言っておかなくちゃ、やっぱりマズいよね。もしかして、ダメって言われたりした?」


 頭を下げると、青島くんは手をひらひらと振って、笑う。


「平気平気。じーちゃんと一緒に居たから、校長も即OKしてくれた。後始末だけちゃんとしろよって。それから、自分にも焼き芋分けろってさ」

「こ、校長先生に許可取りに行ったの?」


 青島くんがサラリと言った言葉に、私は目を見開いた。校長先生に許可を取るなど、そんな大変なイベント事だったのか。焼き芋は。


「いや~、まあ、一応火使うしね。じーちゃんに言われたから、園芸部の先生探したんだけど、職員室に居なくてさ。面倒くさいから、じーちゃんと校長室に乗り込んできた」

「ええ! そんな大それたこと……」

「白野、驚きすぎだって。じーちゃんと校長が友達なのは知ってるだろ?」

「知ってるけど……」

「だから、友達権限? みたいな」


 そう言って笑う青島くんは、校長先生と話したことなど本当に苦に思っていないようだ。私だったら、雲の上の人過ぎて、まともに話などできないだろう。


「そんな事より、早く始めようぜ。安全面を考えると、暗くなる前には、終わった方がいいしな。俺は、芋の仕込みするから、白野は、バケツに水汲んできてくれ」


 そう言いながら、青島くんは紙袋をガサガサと言わせながら、アルミホイルに包まれたものを取り出す。あれが芋だろうか。


「水汲みに行ってくるね。ついでに、このゴミも捨ててくる」


 私は、切り落とされた枝の詰まったゴミ袋を片手に、水汲みへと向かった。


 ゴミ捨て場に、袋をどさりと置いて、バケツを取りに園芸用の用具入れへと向かっていると、帰宅途中の木本徳香とすれ違った。


 あの夏の日以来、木本さんは、こうしてすれ違う時などに、あからさまに敵意を剥き出しにして私の事を睨んでくるが、嫌がらせの類はなくなった。


 青島くんに甘ったるく絡んでいくことは相変わらずだが、その度に、青島くんは彼女に素っ気無くて、その様子を見ると、自分の事でもないのに、なぜだか胸がズクリとするのだった。

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