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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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夏の章 p.18

 お茶と、緑とのおしゃべりのお陰ですっかり忘れかけていた心の中の黒いモヤを思い出した。思わず顔まで曇る。


 私の様子を目にした緑と司書は、互いに目配せをし合う。何があったのだろう。二人の視線がそう言い合っているようだった。


 誰にも知られたくないと思うほどに真っ黒に染まってしまった私の心だけれど、必ず味方でいてくれると言う緑の言葉を信じて、私は、二人の視線に促されるように、重たい口を開いた。


「実は……、私の心の中……真っ黒なの」


 私の、決死の告白を聞いた緑と司書は、ぽかんとした顔をする。意味が分からないのか、互いに顔を見合わせてから、困った様な顔をした緑が小さく手を上げた。


「ごめん。つばさちゃん。それは、どう言う意味かな」


 緑にそう問われることは、なんとなく分かっていた。しかし、自分でも、心の内がよく分からなくて、そう表現するしかないのだ。


「なんて言ったらいいのか分からないの。なんかね、今の空みたいに、どんよりとした黒い雲みたいなモヤモヤしたものが、私の心を覆い尽くす様に広がってる感じっていうか」


 なんとか、心の内を言葉で表現してみる。もっと上手く伝えられたらいいのだが、なかなか思いを的確に表す事ができない。


「せっかく整備した花壇を荒らされて、嫌だなぁとか酷いなぁとか思っていたら、どんどん心の中に黒い雲が広がってきて、そのうち、天気が酷くなるみたいに、心の中が荒れてきたの」


 上手く言葉にできているかは分からないけれど、それでも、私は、必死で心の内を緑に話す。


「あの子が自分の仕業だって言ったのを聞いて、もう、私の心の中は、雷が鳴って、酷く荒れ狂ってた。黒いモヤが渦を巻いているんじゃないかってくらい、ぐちゃぐちゃにかき混ぜられてたの」


 全てを吐き出し、私は、ふぅと息をつく。目を丸くして私の話を黙って聞いていた緑も、私が口を噤んだのを見計らって、一息つくと、お茶を一口飲んだ。


「なーんだ。つまり、つばさちゃんは、怒ってたのを知られたくなかったって事ね?」

「怒ってた?」


 緑の言葉に、私は首を傾げる。


「あれ? 自覚なし? まぁ、いつものほほんとしている天然のつばさちゃんが怒るなんて想像つかないけど、人なんてそんなもんだよ。気にしない気にしない」


 あっけらかんと言う緑に、私はなおも首を傾げた。


「私、怒ってたの?」

「えっ? そうじゃないの? イライラ〜とかモヤモヤ〜が心の中を渦巻いてたんでしょ?」

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