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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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夏の章 p.10

 私たちは、いつの間にか、中庭にある図書館の付近まで歩いて来ていたようだった。私たちは、緑のいる図書館へ駆け寄る。緑も図書館から外へ出てきた。


「葉山、こんなところで何してるんだ?」


 開口一番、青島くんは、緑に問う。しかし緑は、ずぶ濡れの私に目を丸くしていた。


「ちょっと、つばさちゃんどうしたの? そんなに濡れてちゃ、風邪ひいちゃうよ。ちょっと、ヒロくん、タオルとか持ってないの?」

「あ……、いや、持ってない」

「も~。どうして、傘さしてあげてるのに、つばさちゃんを濡らすかなぁ」

「あの、青島くんのせいじゃ……」

「ちょっと待ってて。私のタオル取ってくる」


 相変わらず、ポンポンと弾むようによくしゃべる緑は、私たちの話をろくに聞かず、言いたいことを言うと、図書館の中へと駆け込んでいった。そんな様子に、私と青島くんが苦笑い交じりに視線を交わしていると、すぐにパタパタと足音を立てながら緑が戻ってきた。


「はい。つばさちゃん。このタオル使って。汗拭き用に持ってきたけど、まだ使ってないから」

「ありがとう。緑ちゃん」


 私は、緑に礼を言って、差し出されたタオルを受け取ると、早速、髪を拭き、服の上から、タオルを当てて水気をふき取る。


「ってか、ヒロくん久しぶりじゃ~ん。夏休みだから、全然会わなかったね~」

「おう、そうだな。で、お前、こんなところで何してたんだ?」

「こんなところって。今日は、司書先生のお手伝いで来てるんだ~。そういうヒロくんは? 学校で、つばさちゃんとデート?」


 ニヤニヤとしながら、緑は青島くんに問いかける。明らかに、冗談であろうに、青島くんは、慌てたように否定する。


「バッッ……ッカ。お前、何言ってるんだ! 俺は、部活! 白野だって部活……だよな?」


 ずぶ濡れ、泥だらけの私の姿を見つつ、青島くんが確認してくる。


「うん。そう。花壇のお手入れに来たら、雨に降られちゃって……」

「も~。つばさちゃんってば、何やってるの? 雨が降る前に作業止めればいいのに。雷だって鳴ってたんだし」

「うん。そうだね。ちょっと夢中になっちゃって」


 エヘヘと笑う私に、青島くんがまた心配そうな視線を向けているのがわかった。だから、私は、彼に心配かけまいと、もっと笑みを深める。


 私の笑みに納得したのか、青島くんはクルリと踵を返す。


「それじゃ、俺、ミーティングあるから、もう、行くわ。風邪ひくなよ、白野」

「うん。ありがとう。青島くん」

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