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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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夏の章 p.6

 Noel(ノエル)であるフリューゲルが、他人に対して敵意を剥き出しにしている事に驚き、私は思わず、彼の顔を凝視した。


 フリューゲルの肩越しにピカリと空が光る。まるで、空がフリューゲルの敵意を汲み取り、威嚇に加勢するかのように、遠くの方でゴロゴロと雷鳴が響いた。


「きゃっ」


 小さな悲鳴が聞こえ、視線を戻すと、雷の音に驚いたのか、それとも恐怖を感じたのか、女子生徒が肩をビクつかせる。


 雷鳴に臆し、オタオタとしている彼女の姿を見ていたら、なんだか無性に胸の辺りがムカムカとしてきた。


 何が、「きゃっ」だ。先程までの威勢はどうしたのだ。


 不遜な態度から一変、気弱な空気を纏った彼女の変わりように、私の胸の中では黒いモヤが渦を巻き、空の威嚇の音が、私の中でも鳴り響く。


 一気に膨れ上がった黒いモヤを、そのまま彼女に向けて吐き出そうと、口を開きかけたちょうどその時、頭上から、私を呼ぶ声がした。


「白野?」


 何事かと、顔を上げると、校舎の2階の窓辺から、顔を覗かせていた青島くんと目が合った。しかし、彼は、すぐさま校舎の中へ引っ込み、姿が見えなくなってしまう。


 目の前の彼女も、青島くんの声に気がついたのか、傘を傾け、2階の窓越しに彼の姿を探しているようだ。


 そんな姿に、またもや、胸の辺りにムカつきを覚えた私は、とうとう我慢ならず、尖った声を漏らした。


「あなたさ……」


 そんな私の声を制すように、水溜りの水を跳ねさせながら、足音が勢い良く近づいてきた。


「白野。お前、傘もささずに何やってるんだ。風邪ひくぞ」


 青島くんは、そう言って、私に駆け寄り、自分の傘を差し掛けてくれる。


 狭い傘の中、覗き込むようにして私の顔を見てきた彼は、何かを言いたげに眉根を寄せた。


「何?」


 思わず尖ったままの声を出すと、青島くんは、より一層眉間の皺を深めた。


「何か……」


 困惑気味に、彼が口を開きかけたところへ、甘えたような甘ったるい声音が被さる。


「あれ〜大海(ひろうみ)。部活は? あ、雨だから、もしかして終わり?」


 声のした方へチラリと視線を向けた青島くんは、相手を確認すると、露骨に顔を歪ませた。


「木本。お前、こんな所で何を……?」


 青島くんは、私と、木本という女子生徒の顔を交互に見比べ、やがて何かに気が付いたのか、声音を少し低く響かせる。


「まさか、お前、白野に何かしたんじゃないだろうな?」


 青島くんは、明らかに木本という女子生徒に対して不快感を露わにしていた。

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