表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

23/114

夏の章 p.5

 俯きがちに傘を差しているので、顔はよく見えない。


 誰だろう?


 そんなことをぼんやりと思っていると、不意に暗くて重たい声がした。


「必死で直しちゃってさ。マジで、あんた何なの?」

「え?」

「園芸部に入ったのだって、どうせ彼に近づくためなんでしょ。毎日毎日、必死でアピールしちゃってさ。いい加減目障りなのよ」

「ちょっと、何言って……」


 突然の言いがかりに、私は、混乱しながらも、なんとか、彼女の言い分を理解しようと言葉を挟む。しかし、彼女は、私のことなどお構いなしに、次から次へと、言葉を投げつけてくる。しかも、その言葉の数々は、明らかに、敵意を含んでいた。


「あんた、大海(ひろうみ)の周りをいつもウロチョロしていて、鬱陶しいのよ。園芸部なんて入って、大海(ひろうみ)のおじいちゃんにまで取り入ろうとしてさ。どんだけ必死アピールなわけ?」

「あ、アピール?」


 目の前の女子生徒の言っていることがさっぱり分からない。それでも、彼女が、私に対して敵意を剥き出しにしていることだけは分かる。


「目障りだから、あんたがアピールに使っている花壇でも壊せば、さっさと諦めるかと思ったのに……」


 勢いのままに投げつけられる言葉の中に、聞き捨てならない言葉が含まれていることに気がついた私は、彼女の言葉を思わず遮った。


「ちょっと待って! 花壇を壊した? まさか、最近花壇を掘り返したり、レンガを崩したりしていたのは……」

「私よ! 大海(ひろうみ)に近づくなって警告の意味でやってたのに、あんたってば、全然気がつかないで、毎日毎日懲りもせず、土いじりしちゃってさ。鬱陶しいのよ。空気読みなさいよ」


 大声で投げつけられる言葉に、思わず私も大声を出してしまう。


「さっきから、大海(ひろうみ)、大海って言ってるけど、青島くんと花壇に一体何の関係があるのよ? もっとちゃんと解るように説明しなさいよ!」


 私の剣幕に怯んだのか、それまで敵意を含んだ言葉を立て続けに投げつけてきていた彼女が言葉に詰まった拍子に、私の隣から声がした。


「感情に任せて、人に悪意を向けるなんて、なんて醜いんだ。大樹様(リン・カ・ネーション)のために、アーラがここで、どれだけ必死に学んでいると思っているんだ!」


 それは、フリューゲルが女子生徒へ向けた言葉だった。フリューゲルの姿は、もちろん、目の前の彼女には見えていない。それどころか、フリューゲルが発した言葉の全ては、彼女に一切届いていない。


 それでも、フリューゲルは、目の前の女子生徒を目一杯睨みつけていた。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ