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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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春の章 p.11

「いや、別に詳しいって程じゃないけど。うちのじいちゃんが、そういうの好きでさ。たまに、手伝ったりしてるから、覚えちゃったんだよな」

「おじいさん?」

「そう。植物が好きすぎて、森林保護の活動だかなんだかにも、たまに参加してるぜ。ホント良くやるよ」


 青島くんは、信じられないという感じで、呆れたように言っている。彼の話を聞いていた私も、信じられない気持ちで彼の顔をまじまじと見つめる。


 もちろん、彼とは違う意味でだが。


「あの。私、青島くんのおじいさんに会いたいっ!! 会わせてっ!!」


 思わずとんでもないことを口走る。


 でも、願ってもないチャンスに思えたのだ。チャンスの神様には前髪しかない。しっかりと掴まなければ。


「お願い! 私、どうしても元気にしたい木があるの」

「えっ?」


 私の突然の申し出に、すぐ隣にある彼の不思議な色をしている瞳が、まん丸に見開かれている。そんな彼に、私は、構わず頼み込む。


「青島くんのおじいさんなら、その方法を何か知ってるかもしれないの。だから、お願い!」

「えっ、いや、あの……白野?」


 大樹を蘇らせる方法が分かるかもしれないのだ。そう思うと、もう必死だった。


「本当にお願い!」


 私は立ち止まると、青島くんに向かって思いっきり頭を下げた。青島くんは、私の体を支えたまま、なんだかオロオロしている。だけど、構うものか。私は、彼が「うん」と言ってくれるまで、頼むつもりでいた。


「白野、頭を上げてくれ」

「でも、私、ホントにおじいさんに……」

「わかった。わかったから」


 無理やりな私の態度に、彼は嫌気がさしているかもしれない。


 庭園(ガーデン)育ちの私は、まだ人の感情がそんなに分からない。それでも、下界で暮らし始めてから、学んだのだ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()


 分かっているつもりだったが、目の前のチャンスを是が非でも掴みたかった。だから、勢いに任せて頼み込んだ。こんな頼み方ではダメなのに。


 彼の眉間に皺が寄っていることを覚悟しながら、私は、そろりと顔を上げる。しかし、そこには予想に反して、満面の笑みがあった。


「びっくりするだろ。突然、頭とか下げるなよ」

「ごめん。私、必死で……」

「あはは。ホントに必死だったな。いいよ、全然。うちのじいちゃんで良ければ」

「ホントに!?」


 青島くんの明るい笑みにつられて、私の体から力が抜けた。必死のあまり、全身に力が入っていたようだ。顔の筋肉まで緩んだ気がする。

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