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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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エピローグ p.15

 振り返ると、玄関の前に女性が立っていた。穏やかな笑顔を湛えたその女性は七十代くらいだろうか。


「あ、あの……」


 戸惑う私に彼女はニコリと微笑む。


「ゆっくりしていらして」


 女性はそう言うと、家の中に入っていった。


「あ、ありがとうございます!」


 私は慌てて頭を下げ、彼女を見送った。


「あ、あの人は?」


 何が何だか分からなすぎて混乱気味の私に、青島くんは苦笑いした。


「白野、この場所どこだかわかってるか?」「え? ここ……?」


 私は一度庭を出ると改めて辺りを見回す。見覚えのある風景だったことに、アッと声を上げた。


「ここって、あの空き地だった場所!」

「正解」

「え? でも、どうして?」


 私は首を傾げる。青島くんはゆっくりと話し始めた。


「一年前のあの日。白野がここに咲いていた花のことを随分と知りたがっていたからさ、気になってちょくちょく様子を見にきてたんだ。そうしたら、ちょうどさっきのあの人……、真崎さんに会ってな。事情を話したら『新しく家を建てても花は残しておくから、ぜひ家に遊びに来て』って言われてさ。それから俺、たまに花の様子、見に来てたんだ」


 青島くんは照れ臭そうに頭を掻いた。


「そっかぁ……。あ、だからここに連れてきてくれたのね」


 私は納得し、もう一度白い花のほうを見る。やっぱり可愛い。花を見つめているうちに自然と口元が綻んだ。なんだかこの花を見ていると、不思議と懐かしさが込み上げてくる。


「白野っ!?」


 突然大きな声で呼ばれ、ハッとする。青島くんは心配そうな顔で私の顔を覗き込んでいた。


「どうした?」

「え? 何が?」

「だってお前、泣いて……」


 彼は言いながらポケットからハンカチを取り出した。


「あれ……。本当だ」


 指摘され、初めて自分が涙を流していることに気がついた。


「なんでだろ……」


 自分でもよくわからない。ただ、何故か涙が止まらなかった。青島くんが差し出してくれたハンカチを受け取り、目に当てる。すると、ますます涙が溢れてきた。


「ごめんなさい……」


 私は嗚咽混じりの声で言う。青島くんは何も言わず、私の隣に立ち続けた。


「落ち着いたか?」


 しばらくして、ようやく泣き止んだ私は青島くんの言葉にコクンと首肯する。


「うん。大丈夫」


 まだ少し目は赤いけど、気分はかなり楽になっていた。私は深呼吸をして、青島くんに向き直った。


「えへへ。なんで私泣いたりしたんだろ」

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