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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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112/114

エピローグ p.14

 彼はそう呟き、何かを言おうとして口を閉じた。そして、また口を開く。


「あのさ、白野」


 彼は真剣な眼差しで私を見た。その目を見つめ返しながら、「ん?」と返事をする。


「今度、映画観にいかないか?」


 彼の口から出てきたのは意外な提案で、私は目をパチクリさせた。


「別に無理強いするつもりはないけど……。どうかな?」

「うん。もちろん良いよ」


 間髪入れずに答えると、彼はホッとした様子を見せた。


「良かった。じゃあ、約束な」

「うん。絶対だよ」


 私は青島くんに小指を差し出す。彼は、一瞬戸惑ったがすぐに察してくれたようで、同じように小指を出してきた。絡めた瞬間、胸の奥がトクンと跳ねる。


 あぁ、きっと私はこの人のことが好きだ。


 そんな想いが溢れてくる。でも、まだ気づかないフリをしよう。もう少しだけ、このままの関係に甘えよう。いつか私の中ではっきりと「好き」が形になったら、その時はしっかり青島くんに気持ちを伝えたい。


 その時はきっとそれほど遠くないはずだから。だからそれまで、もう少し待っていて。


 私は心のなかで青島くんに語りかけた。


 絡まった小指が解かれ、私たちは再び歩き出す。私たちの足取りは軽かった。


「ねぇ、青島くん。そろそろ何処に行くか教えてくれない?」


 私がそう訊ねると、青島くんは悪戯っぽい笑みを浮かべる。


「着いたぞ」

「え? ここ?」


 私は目の前の建物を見て思わず声を上げてしまった。真新しい一軒の住宅。二階建ての白い外壁に青い屋根が映える、可愛らしい家だ。どう見ても個人宅のようだが、どうして青島くんはここに私を連れてきたのだろう。


 訝る私をよそに、青島くんはそそくさとインターホンを押す。インターホンに向かって慣れた様子で挨拶をすると、門扉を押し開けた。


「こっちだ」

「え? だって人のおうちでしょ。勝手に入っていいの?」


 慌てる私に先を行く青島くんが手招きする。渋々ついていくと、小さな庭があった。そこには、ベルのような形をした白い花が咲いていた。


「あ、この花……」

「一年前、白野が見ていた花ってこれだろ。ホワイトエンジェル」


 私はコクリと首を振る。


「クレマチスの一種だよ。もうそろそろ終わりの時期だから、間に合ってよかったよ」

「へぇ〜。やっぱり可愛い」


 私はしゃがみ込み、間近で眺めた。花を眺めて楽しんでいると、後ろから声をかけられた。


「こんにちは。今日は可愛らしい子も一緒なのね」

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