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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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春の章 p.6

 ポスターを見ながら呟いた私の言葉に、隣にいるフリューゲルが不思議そうに聞いてくる。


 私は、ポスターの中心を指す。


「この真ん中の木、大樹様(リン・カ・ネーション)みたいじゃない?」

「う~ん。大きくて立派な木には見えるけど……」

「やっぱり! そうでしょ。こんな立派な木、滅多にあるものじゃないよ」


 私は一人納得して、止めていた足を再び学校へと向けた。歩き出すと、フリューゲルが後を追ってくる。


「ねぇ、どうして森林保護団体なの?」

「だって、あの写真、見たでしょ。あんな大きな木の存在を知っているってことは、木に詳しいのよ。それに、ポスターには、“守ろう森林”ってあったでしょ。きっと、弱った木を元気にする方法を知ってるはずよ」


「う〜ん。そうかも知れないけど、でもどうして?」


 フリューゲルは、まだわからないという顔をしている。


「だからね、大樹様(リン・カ・ネーション)を直す方法が分かるかもしれないでしょ。きっと、私の『学び』は、大樹様(リン・カ・ネーション)を甦らせる方法を知ることなのよ」


 私は、下界で木のことをたくさん学ぶ。庭園(ガーデン)へ戻ったら、その経験を基に、大樹のお世話をする。


 きっと、これが大樹の望みなんじゃないかな。そう思うと、先が少し明るくなったような気がした。


 フリューゲルは、腕組みをしてまだ浮かない顔をしている。


 やっと前進するきっかけを見つけたのに、なんて顔をしてるのかしら。仕方がない。私のお気に入りのあの場所を見せてあげよう。あれを見ればきっと、フリューゲルの心も晴れるはず。


 私は、声を弾ませて言った。


「あのね、すぐ先の空き地、私のお気に入りの場所なの。きっと、フリューゲルも気に入るはずだよ。ちょっと行ってみよ!」


 私は、50メートルほど先の空き地へ駆け出した。


「ちょっと待ってよ。アーラ」


 そう言いながらも、フリューゲルに慌てた様子はない。Noel(ノエル)の彼は、走ったりはしない。ゆっくりと自分のペースを守って、私の後をついてきていた。


 先に着いた私は、空き地の入り口にしゃがみこんだ。


 この場所には、近いうちに新しい家が建つらしい。少し前から、作業用の大きな車が停まっているのを見かけるようになった。私がしゃがんでいるすぐ横には、木材をたくさん積んだ車が、今日も停まっている。


 なぜ、そんな空き地がお気に入りなのかというと、実はここに、小さな白いベルの形をしたかわいい花が咲いているのだ。


 大樹の花をすごくすごく小さくしたみたいな花。

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