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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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エピローグ p.9

 フリューゲルの言葉に私が顔をあげると、フリューゲルは自信満々に頷き返した。


「誰に何を祈るの?」

「それはもちろん。神様と大樹様(リン・カ・ネーション)に、彼女たちの幸せをだよ」

「聞き届けて下さるかしら?」

「それは分からないけれど、僕たちに奇跡をもたらしてくださったのは、あの方々なんだから。きっと、できなくはないさ」


 そう言われると、なんだか本当に願いが叶えてもらえるような気がしてくる。フリューゲルの言葉には不思議な力でもあるのだろうか。


 フリューゲルに「うん」と頷く。私は、神様にはお会いしたことがないので、ちょっと思いが届きにくいかもしれない。でも、懐かしい庭園(ガーデン)と、そこに唯一(そび)え立つ大樹『リン・カ・ネーション』のことならば、今でもまだ身近に感じることができる。私は懐かしいあの場所を心一杯に思い浮かべる。そして、私の想いが届くようにと強く思いながら祈りをささげた。


 ココロノカケラの少女が、そして彼女を取り巻く者たちが、これから先、幸せでありますように。


 私が一心に祈りを捧げている間に、ココロノカケラの少女の周りにはさらに人が増えていた。少女のことが見えている者も見えていない者も、その場にいる全ての人たちが少女との別れを惜しんでいた。彼ら全員に今この時の記憶が残らないなんて、そんな寂しいことがあっていいはずがない。何とか、彼らの記憶に、そして魂に、今日という日が残りますように。


 私が一心に祈っていると、花散らしの風が、どこからか桜の花びらを運んできて、中庭に小さなつむじ風を起こした。ピンク色のつむじ風はココロノカケラの少女を包み込むようにして舞い上がる。つむじ風がどこかへふわりと去っていき、あとには、少女を囲むようにして桜の花びらが残されているのみだった。


 ピンクの花びらに囲まれた少女は別れが済んだのか満足そうな顔をしている。その顔をみて、良かった、もう思い残すことはないのだろうなと思っていると、再び暖かな風が頬を撫でるように吹き過ぎた。その風にさらわれるように、足元に落ちていた花びらはふわりと舞い上がり、そのまま風に流され空高くへと去っていく。その場にいた全員が、無言のまま、去っていく花びらに目を奪われていると、やがて花びらは、空に溶けるように見えなくなった。


「フリューゲル、あれって、もしかして?」


 幻想的な光景に私がぼんやりとした声で問いかけると、傍らのフリューゲルがふわりとした声で答えた。

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