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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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エピローグ p.6

 学校に着くと、私たちはもう一人のココロノカケラの女の子が大切にしている花壇へと向かう。このところのポカポカ陽気に誘われる様にして地中から顔を出した緑の小さな葉が、花壇に絨毯を広げた様に生い茂っていた。


 肥料をまき、水遣りをしていたとはいえ、本当に芽吹くだろうかと心配したが、こうまで見事に発芽するとは思わなかった。


「上手く芽吹いたみたいだね」


 ようやく追いついてきたフリューゲルが私の隣に並び、感心したように唸る。私は、花壇のそばに置いたままにしていたジョウロを手にし、水汲みへ向かいながら返事をした。


「本当に。良かったわ。上手く育つか、少し心配だったの」


 たっぷりと汲んだ水を花壇に撒きながら、葉の状態を観察する。パンと水を弾く葉は健康そのもの。これから大きく育つだろう。


 陽光をキラキラと反射させながらサァァと葉に降り注ぐ細い水を小さな葉たちが気持ちよさそうに浴びているような気がして、なんだか嬉しくなる。


 自然と口角が上がっていくことを感じながら水遣りをしていると、背後からキャッキャッと弾けた話し声が聞こえてきた。


 声のした方へチラリと視線をやると、例のココロノカケラの女の子が、中庭へ足を踏み入れたところだった。少女に続いて、男子生徒と女子生徒もこちらへ向かってくる。三人は何やらワイワイと話していたが、こちらの存在に気がついた二人は、警戒するように私と距離をとって足を止めた。


 男子生徒には見覚えがあった。彼はもしかしたら私のことを覚えていないのかもしれない。記憶を探るように首を傾げている。そんな連れのことなど気にしていないのか、ココロノカケラの女の子が駆け寄ってきた。


「センパイ。来てたんだ」

「こんにちは。あなたのスターチスに水をあげていたところだよ」

「いつもありがとう」


 そんな会話を交わす私たちの背後では、少女の連れの男子生徒と女子生徒がコソコソと会話をしている。少女は振り返りつつ手を振って、そんな二人を呼んだ。その声に引っ張られるように二人はぎこちない足取りで歩み寄ってきた。そばに来た二人に、私は笑顔を向ける。


「きみは確か前にも会ったよね? 園芸部のこと、考えてくれた?」

「……いえ、俺は……」


 私の勧誘に辟易としたのか、男子生徒は私から距離を取る。そんな彼の行動に苦笑いを浮かべつつ、今度は、女子生徒に声をかける。


「あなたは、はじめましてよね?」

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