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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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エピローグ p.5

 そう言って、フリューゲルはいたずらそうな笑みを浮かべた。やっぱり双子の片割れは、私のことをよく分かっている。


 私はフリューゲルに見透かされたことに少しだけばつの悪さを感じて、彼からふいっと目を逸らした。


「もう、何でもお見通しって感じで見るのはやめて」

「あはは。ごめんごめん。でも本当にやめたりしないで。僕のためとかじゃなくて、きみには好きなことを伸び伸びとやって、楽しくこれからを過ごして貰いたいんだ」


 フリューゲルの真剣な声に、逸らしていた視線をチラリと彼の方へ戻すと、楽しそうな笑みは、いつの間にか、真剣な眼差しへと変わっていた。


 そんな眼差しからは、私のことを大切に思ってくれている彼の気持ちがとめどなく伝わってきて、私の心は嬉しさに震えた。けれど、それと同時に、こんなにも私のことを大切に思ってくれている自身の片割れのことを私は忘れてしまうのだなと思うと、寂しさと哀しさが込み上げてきて、視界が少し霞む。


 もう受け入れたはずでしょうと、自分自身に言い聞かせて、唇を少しきつく噛む。目をぎゅっと瞑り、鼻から大きく息を吐き出してから、パチリと目を開けた。


 私は、フリューゲルをしっかりと見つめて、飛び切りのイタズラ顔をニッと見せる。


「私が園芸をやめるわけないでしょう! アーラでいるうちは、続けるわ。融合が完全に終って、白野つばさになったても、きっと私は続けるわ」


 そんな私の宣言に、フリューゲルもニッと笑い返す。なんだか、金の環と綺麗な羽を持つ天使様には似合わない笑い方だなと思ったら、おかしくなって私は、あははと笑い声が口から漏れた。


「何? 突然どうしたの?」


 急に笑い出した私に、フリューゲルはぎょっとした様に目を見開いた。その顔がまた面白くて、さらに私は笑い声をあげる。


「あはは。ううん。なんでもない。あー、可笑しい」


 いつの間にか目に滲んだ涙を指で拭いながら、私は首を振ると、学校へ向かって駆け出した。


「行こう! フリューゲル。花壇のお手入れをしなくちゃ」

「ちょっと待ってよ。アーラ」


 そう言いながらも、フリューゲルに慌てた様子はない。天使様になっても彼は、走ったりはしない。ゆっくりと自分のペースを守って、私の後をついてくる。


 そういえば、前にもこんな事があったなと思い出す。この世界に来てまだ一年。それなのに、一年前の春のことがもう随分と昔のことのように思われた。

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