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雲の上は、いつも晴れだった。  作者: 田古 みゆう


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エピローグ p.2

 私の言葉につられるようにして、フリューゲルが空を仰ぎ見た。私ももう一度青い空を見上げる。薄い雲がたなびく春の空に、珍しく大きな雲の塊を見つけた。


「見てフリューゲル。大きな雲の塊。もしかして、あの雲の向こう側に庭園(ガーデン)があるのかしら?」


 何気なく零れ落ちた私の郷里への想いを、フリューゲルはふわりとした笑顔で受け止めた。フリューゲルは以前から落ち着いていたけれど、天使様になってからはさらに落ち着きを増して、最近は、もう何にも動じないのではないかとすら感じることがある。これが成長するということなのだろうか。


「ねぇ。結局、フリューゲルは何を学んで天使様になったの?」


 そういえば何となく聞きそびれていたなと思い、私が傍らに立つ彼を見上げると、彼は不思議そうな顔をした。


「あれ? アーラは僕の変化に気がついていなかったの?」

「変化って? 天使様の証である金の環と背中の羽のことならちゃんと分かってるわよ」

「違うよ。そういうことじゃなくて」


 そう言いながらフリューゲルは自分の顔を指差す。私に向かって、ニッコリと微笑むフリューゲル。彼が何を言いたいのか分からなくて、私が首を傾げていると、それを見て呆れた様子のフリューゲルは、今度はムッキーと怒りのポーズをした。


 突然憤慨し始めたフリューゲルに私が目を丸くしていると、今度は哀しそうに眉をひそめる。コロコロと変わる彼の表情に呆気に取られていると、フリューゲルは声を上げて笑い出した。可笑そうに口元を隠しながら、彼は意味ありげに私を見てくる。


「これだけやってもまだ分からない?」

「もしかして……学びって……」


 フリューゲルが言わんとしていたことにようやく気がついた私が彼の顔をじっと見ると、フリューゲルは、またフワリと微笑んだ。


「そう。感情を知ることが僕に課せられた『学び』だったんだ」


 確かに、いつの間にかフリューゲルはよく笑うようになっていた。あまり怒ったり哀しんだりといった素振りは見せないけれど、Noel(ノエル)として庭園(ガーデン)にいた頃よりも、随分と表情豊かになっている。


 そのことにはなんとなく気がついていたのに、この世界では感情を表す事が当たり前で、いつの間にか私は、フリューゲルの変化に疑問を持たなくなっていた。それはつまり、私がどっぷりとこの世界に馴染んでいるということでもあるのだが。


「そっか。感情を知るか。それは、庭園(ガーデン)ではなかなか知ることが出来ないもんね」

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