黒いローブ
※この作品は、再投稿したものがあります。
再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。
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花祭り当日。夜の街。
噴水広場は、たくさんの屋台と賑やかな声や音楽でいっぱいだった。カラフルに光る電球に手作りの提灯は、祭りの夜を灯した。屋台からは、いい匂いがした。
「――ハックシュンッ。」
ひめるのくしゃみに、フレンドソーセージのビニールを剥いていたピオが大きなため息をついた。アニータはひめるにティッシュを渡した。
「しっかり体調悪いな。」
ソーセージを食べるピオの隣で、ひめるは鼻水をティッシュで拭い、水筒に入った暖かいお茶を1口飲んだ。
家を出る時、トールは心配な表情をしていたが、行く準備をして玄関に立っていたひめるに暖かいお茶を入れた水筒とカイロを鞄に入れた。
「ついてないな。」
お面を頭につけたコウカは、口いっぱいにベビーカステラを頬張っていた。
レンは自分の出番を披露予定表で確認し、屋台でリンゴ飴を二人分もらって一本をアニータに渡した。
「この時期は寒くなりますし。早く治るといいですね。」
涙目のひめるに、コウカは持っていたベビーカステラを二つひめるの手に乗せた。
“バーーンッ”
突然、遠くから爆発音のような大きな音が街に響いた。
賑わっていた街の雰囲気は、騒然とした。
「なんだ」
ピオとコウカは、立ち上がって辺りを見回した。
遠くで聞こえる悲鳴と、同時に建物が崩れるのが見えた。そして、黒いローブを纏った一人を先頭に、複数の黒いローブを纏った何者かが現れた。
音が聞こえた方から離れるように、広場に何人かが逃げてきた。
逃げてきた人たちは口々に呟いた。
「まただ」
「あいつら、どうしてこんなことを」
黒いローブを纏った先頭の者は、軽々と屋根の上へ、そして街頭の上へ移動し広場の様子を見下ろした。後からきた残りの数人も、続けて建物の屋根を飛び回り、飾りつけを壊し、花や草をふみ潰した。
遠くの方で建物崩れる音、街を囲う森の木や花が燃える音と匂い。そして森が見える景色は、炎でだんだんぼんやり明るくなった。その恐ろしい光景に、街の人は噴水付近に集まり怯えていた。
ひめるは、みんなの安全を確認するため辺りを見回した。
“――ガサッ”
「いやーーー!!」
広場に響く、レンの悲鳴。屋根にあった飾り付けのリボンとぬいぐるみが、怯え腰を抜かしてしまったレンがいる近くの木に引っかかっていた。
ひめるは、レンに駆け寄ろうとしたが、
「おい。大丈夫か」
ひめるより先に、コウカがレンのそばに寄った。
「待って!アニータ!」
ピオの声がした。
「――え?――そんなの。そんなのうそよ!!」
「やめるんだアニータ!危ないから。」
ピオは、崩壊があった建物がある方へ向かおうとするアニータの腕を掴んで引き止めていた。青ざめたアニータは、街をただ見つめていた。その様子を、黒いローブを纏った者は、街頭の上から見下ろしていた。
「そんなはずない!一体、誰が。――」
「――」
その時、先導するように走ってきた黒猫のペンタと、白いローブを纏った二人組がひめるたちの前に現れた。
しかし。
「――なんか。――あれ。息が。――」
ひめるは、息がうまくできず、視界が揺れ、目の前が真っ白になった。
読んでくれてありがとう。
何かが近づいてくる音って少し怖いです。
サッカーボールと蹴る音とか、電車とか救急車が近づいてくる音、虫が飛ぶ音も嫌いです。