りんご飴
※この作品は、再投稿したものがあります。
再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。
「どれがいいと思いますか?」
月明かりは、澄んだ湖に反射していた。
湖を囲う森からは、コウロギの鳴き声が聞こえた。
街灯の下。木のテーブルには、首飾りや簪がいくつも並べられていた。レンは、アニータに明日の花祭りでつける髪飾りを選んでもらっていた。
「どれも素敵ねー!」
毎年花祭りでは、広場の噴水を囲って歌や踊りを披露される。レンもその一人だった。
アニータは一つひとつ手に取っては、レンに似合うものをじっくり選んだ。
「今年は、何食べようかなー俺」
柔らかい草の上に寝転がったコウカは、夜の空の見上げ星座を探していた。
コウカのお腹の上では、モノも一緒に夜空を見上げていた。
「何ってお前、毎年結局全部食ってるじゃねえか」
隣でストレッチをしていたピオが、コウカに言った。同じくストレッチをしていたひめるは、テーブルでレンと話すアニータを見ていた。アニータはそれに気づかず、楽しそうにレンと話していた。
「そうだっけ」
「ああ。”結局全部うまかったーって言っていましたよ”、って隣にいたレンが言ってたしな」
「あーそうだったな。レンは、リンゴ飴1本で嬉しそうにしてたっけな」
コウカは、夜空の星座を指でなぞった。
「ーー手繋いだの?」
ピオの小声に、コウカは起き上がった。
コウカのお腹に乗っていたモノは飛び上がってテーブルの上へ移動した。
「繋いでねえよ。ーーこれからだよ。お前こそ、しっかりしねえと、ひめるに追い越されるぞ」
「ばか、俺はそんなんじゃないって」
「じゃあ僕、今年アニータと二人で花祭りまわってもいい?」
少し恥ずかしそうにしたひめるが、真剣な目でピオに言った。
ピオは驚いた。コウカは、面白そうに二人を眺めた。
ピオの返事を待たずに立ち上がったひめるは、アニータとレンがいるテーブルに向かった。
「ねえ、アニータ。今年のまつりさ、僕と」
「みんなでまわろう!!」
急いで立ち上がったピオは、ひめるの言葉を遮るように言った。
「ちょっ」
「そうですね」
ピオの提案に、すぐレンが賛成した。
「去年は、途中でひめるさんの体調が崩れてしまって、皆さんでまわれていないですもんね。今年は、皆さん一緒にまわりましょう」
去年に限らず、毎年花祭りの前後で必ず体調を壊すひめるは、途中で帰ったり、ひどい時はトールに行くことすら止められたこともあった。
だから、明日は万全の状態でまつりを楽しめるよう、ひめる自身も自分の体調管理を気をつけていた。
「ほら。それでいいよな。ひめる。お前が体調崩すと白けるから、今年は頼むぞ」
腕を組んだピオは、ひめるに言った。ひめるは、申し訳なさそうに笑った。
「ピオは、ひめるがいないからって、心配してすぐ様子を見にいくとか言い出すからな」
コウカは意地悪に笑った。
「それはちげえって。あの時は、せっかくあいつも準備手伝ったのに、楽しめないなんてかわいそうだって言ったんだ。ーーアニータもお店の手伝いでいなかったし」
ピオは、俯いて小声で言った。
「今年は、アニータも花祭りに来られそうですか?」
「えぇ。イブに、友達とまつりに行くってお休みをいただいたわ」
ピオはアニータに見えないところで、小さくガッツポーズをした。コウカはそれをみてニヤニヤ笑った。
「決まりだな。明日はみんなでまわろうぜ。みんなでまわるのなんてひっさびさだな!」
コウカはそう言い、みんなが集まるテーブルに座った。それに続いて、ピオとひめるが座った。
みんながそれぞれ話始めてから、コウカは、ポケットの端末を取り出した。
「メンテナンス。ーーアップデートか」
コウカは、端末でゲームのサイトを見ながら、ボソッとつぶやいた。ピオは、アニータとひめるに、まつりでおすすめの屋台を教えていた。
レンは、コウカの端末を覗き込んだ。
「皆さんに秘密にやっているゲームですね」
レンは、小声でコウカに言った。
「おう。明日には完了するみたいだし、夜にはできるといいなあ」
「コウカさんは、そのゲームがお好きですもんね」
「誰にも言わないでくれよ。強えやつと協力して、強え敵を倒すのが、楽しいんだ」
コウカとレンは他の三人に気づかれないように、小声で話していた。
そして、予定通り花祭りは行われるはずだった。
読んでくれてありがとう。
気がつけば、家族から友達に、友達から恋人に。お祭りで隣を歩く人は変わっていました。
チョコバナナが好きです。あと、焼きそばも。
雰囲気がより楽しく、美味しくしてくれますよね。