夕日
※この作品は、再投稿したものがあります。
再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。
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夕日は、コウカとレンの二人の影を作っていた。
「――レンってさ」
「なんでしょう」
「なんかその。――気になってるやつとかいんのか?」
歩く道は、イチョウの葉が落ちていた。
「――そう、ですね」
花壇に咲く金木犀が、風で揺れた。
「――そっか。」
コウカはレンを家まで送った。
レンに手を振ったコウカは、頑張ろと小さく呟き家に向かった。
夕日で森の木は橙色に染まり、紅葉はより一層と四季の移り変わりを知らせているようだった。過ごしやすかった昼とは違って、肌寒い風が吹いた。
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「ねえピオ、ここ分かん、――」
ひめるは、ピオに言われた問題を解いていたが、ピオは途中で疲れて眠っていた。ひめるは、近くにあった店のエプロンをピオの肩にそっとかけて、机に広げていた教材をいつもの棚にしまい、静かに店のドアを閉めた。
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その夜。
コウカはベッドに寝転がり、端末を操作していた。
『クエスト失敗』
「ちぇー。今回のイベントドラゴンつえーなー。タンクがいないから俺がやってるのに、このパーティーのヒーラーが、ーーいまいち。ーーうーん、息が合わないって言うか、ーーうーん。ヒーラーは練習中なのかな、きっと。プレイヤーのレベルは高いしな。きっと努力家なんだな。よし、がんばれ!俺はお前みたいなやつ嫌いじゃないぞ!」
コウカが端末に向かって独り言を言っていると、別のプレイヤーがパーティーから抜けた。
「って、ーーもう1人のプレイヤー抜けちゃったけど」
しかし、プレイヤーが抜けてすぐ、入れ替わるようにまた別のプレイヤーがパーティーに参加した。
「お。と思ったら別のヒーラーが入ってきたぜ。この人もレベルたけえなー。お、ヒーラーやってた奴、次は大剣もったのか。よーし、これでゲームスタートだ!」
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ーー真っ白な部屋の中。広い空間。
端末の画面で、“パーティーを抜ける”を選択したアコは、青と黒が混じったの前髪を結びなおした。
片方の腕がないぬいぐるみ、針や糸、用意した布地を身の回りに置いて、その片方の腕を作りながら、アコは端末を操作していた。
「――」
隣に座っていたのは、アコより暗い青色の髪をツインテールに結んだ女の子、ーーアヤメ。アヤメは、自分の持っていた端末の画面をアコに見せた。
「ん?――短剣解放されたの?」
アヤメは自慢げに大きく頷いた。
「よかったじゃん。よしよし」
アコは、嬉しそうにしているアヤメの頭を撫でた。
「じゃあやっと次、魔術師解放だな。」
アコのその言葉に、アヤメはため息をついた。
「はは。まだまだ長い道のりだな。」
アコは、針に糸を通そうとした。
“ピコン”
アコの端末が鳴った。端末にはゲームの招待がきていた。
“アヤメ さんからパーティーに招待されました。”
アヤメは、真剣な眼差しでアコを見つめていた。
「いいよ。どこいきたい?」
二人は、再び端末に眺めた。
読んでくれてありがとう。
金木犀の香りはいつまで経ってもいいですよね。




