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花の下にて  作者: 薬剤師のやくちゃん
10/16

夕日

※この作品は、再投稿したものがあります。

再投稿したものは、イラストをつけて情報整理しやすくなっています。

***


夕日は、コウカとレンの二人の影を作っていた。


「――レンってさ」

「なんでしょう」

「なんかその。――気になってるやつとかいんのか?」

歩く道は、イチョウの葉が落ちていた。

「――そう、ですね」

花壇に咲く金木犀が、風で揺れた。

「――そっか。」


コウカはレンを家まで送った。

レンに手を振ったコウカは、頑張ろと小さく呟き家に向かった。

夕日で森の木は橙色に染まり、紅葉はより一層と四季の移り変わりを知らせているようだった。過ごしやすかった昼とは違って、肌寒い風が吹いた。


***


「ねえピオ、ここ分かん、――」

ひめるは、ピオに言われた問題を解いていたが、ピオは途中で疲れて眠っていた。ひめるは、近くにあった店のエプロンをピオの肩にそっとかけて、机に広げていた教材をいつもの棚にしまい、静かに店のドアを閉めた。


***


その夜。

コウカはベッドに寝転がり、端末を操作していた。

『クエスト失敗』

「ちぇー。今回のイベントドラゴンつえーなー。タンクがいないから俺がやってるのに、このパーティーのヒーラーが、ーーいまいち。ーーうーん、息が合わないって言うか、ーーうーん。ヒーラーは練習中なのかな、きっと。プレイヤーのレベルは高いしな。きっと努力家なんだな。よし、がんばれ!俺はお前みたいなやつ嫌いじゃないぞ!」

コウカが端末に向かって独り言を言っていると、別のプレイヤーがパーティーから抜けた。

「って、ーーもう1人のプレイヤー抜けちゃったけど」

しかし、プレイヤーが抜けてすぐ、入れ替わるようにまた別のプレイヤーがパーティーに参加した。

「お。と思ったら別のヒーラーが入ってきたぜ。この人もレベルたけえなー。お、ヒーラーやってた奴、次は大剣もったのか。よーし、これでゲームスタートだ!」


***


ーー真っ白な部屋の中。広い空間。

端末の画面で、“パーティーを抜ける”を選択したアコは、青と黒が混じったの前髪を結びなおした。

片方の腕がないぬいぐるみ、針や糸、用意した布地を身の回りに置いて、その片方の腕を作りながら、アコは端末を操作していた。

「――」

隣に座っていたのは、アコより暗い青色の髪をツインテールに結んだ女の子、ーーアヤメ。アヤメは、自分の持っていた端末の画面をアコに見せた。

「ん?――短剣解放されたの?」

アヤメは自慢げに大きく頷いた。

「よかったじゃん。よしよし」

アコは、嬉しそうにしているアヤメの頭を撫でた。

「じゃあやっと次、魔術師解放だな。」

アコのその言葉に、アヤメはため息をついた。

「はは。まだまだ長い道のりだな。」

アコは、針に糸を通そうとした。

“ピコン”

アコの端末が鳴った。端末にはゲームの招待がきていた。

“アヤメ さんからパーティーに招待されました。”

アヤメは、真剣な眼差しでアコを見つめていた。

「いいよ。どこいきたい?」

二人は、再び端末に眺めた。

読んでくれてありがとう。

金木犀の香りはいつまで経ってもいいですよね。


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