9章 優美の危機、混乱の文化祭
9章 音楽部の危機、混乱の文化祭
「フェアー! 一気に200人の心の輝きを奪ったことは褒めてやろう。しかし、いつになったら戦士たちの息の根を止められるのだ!」
フェアーの心は、焦りでいっぱいだった。
いよいよ愛華と希実にとって、初めての文化祭が近づいてきた。松見中学校では、文化部の発表とクラスごとに合唱発表をやることになっている。愛華と希実はわくわくした気持ちで練習に臨んでいた。そして、優美にとっては中学最後の文化祭である。優美は、音楽部の発表でピアノの重要なパートを任されて緊張していた。それでも練習は順調に進み、文化祭まであと一週間に迫った頃、優美が練習を終えて遥花と帰っていると後ろから希実と帰っている愛華が話しかけてくる。
「遥花先輩、優美さん、お疲れ様です」
愛華は2人に言う。優美は遥花に
「遥花が愛華ちゃんと話す機会を作ってくれたおかげで、私はちゃんとお礼を伝えることができた。改めてありがとう」
と言った。遥花は
「私は、ちょっと優美の手助けをしただけだよ。あれから優美、愛華ちゃんたちとも仲良くしているみたいだし、友達が増えたのなら良かったよ。今、愛華ちゃんの隣にいるのは輝東さんでしょ?」
と言って、希実に聞く。希実は
「101の輝東希実です。バスケ部に入っています。よろしくお願いします」
と、遥花先輩に自己紹介する。遥花は
「やっぱりそうだった。改めて、私は前田遥花。クラスは優美と同じ302。これから希実ちゃんって呼んでもいい?」
と、嬉しそうな顔で聞いてくる。希実は慕える先輩が増えることが嬉しくて、そのことを快諾した。それから、4人で帰っていると話は自然と文化祭の話題になっていく。
「優美さんは、部活の発表何をやるんですか?」
愛華が優美さんに聞く。
「今年は色々な楽器による演奏を発表することになったわ。私はピアノの演奏をすることになっているの」
優美の言葉に愛華と希実は飛びついてくる。
「優美さん、ピアノ弾けるんですね。すごいです」
愛華が優美さんに目をキラキラさせて言う。優美さんは、
「ええ。入院していた病院にピアノが置いてあって、私が聴いた曲をすぐにそのピアノで弾けたから、お母さんやお父さんは褒めてくれて、同じ病院内に入院していた年の近い人たちが絶対音感だって言ってもらえて。それが嬉しくて、ずっと独学で練習してきたの」
と愛華たちに言った。
「私も、優美さんのピアノを聴けるのを楽しみにしています
希実も優美さんにそう言った。
「でも無理して練習しすぎて、体調は崩さないでよ」
愛華と希実の言葉とは違い、遥花先輩は優美さんを気遣う言葉をかける。
「あのときは、みんなに迷惑かけてしまったわ。休養も取ってしっかり本番に備えるね」
優美は遥花の言葉に微笑んで返した。
文化祭前日、優美は、朝から少し熱っぽいような気がした。1日休めば明日は大丈夫だろうと思い、その日優美は学校を休む。しかし次の日も体調は良くならず、優美は文化祭に出られなくなった。愛華と希実はこのことを遥花先輩から教えてもらって知り、優美さんのことが心配でいてもたってもいられなくなる。そのとき、外で大きな音がした。窓の外を見るとトイフルがいる。文化祭に来た父兄などのお客さんが心の輝きを奪われて倒れていた。
「希実、行こう」
愛華は希実に言った。
「ルビーパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「トパーズパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「炎と愛の戦士、シャイニールビー」
「光と希望の戦士、シャイニートパーズ」
2人は外に出ると、変身する。
「今日は戦士が1人少ないようだな。こっちにとっても好都合だ」
フェアーがそう言って、ルビーとトパーズにトイフルと襲いかかってくる。ルビーは、トパーズと共に必死にフェアーとトイフルの動きを止めようとする。
「ルビー、まずはトイフルを倒そう。その後、2人で協力してフェアーに攻撃しよう」
トパーズがルビーに言う。
「トパーズ・サンダー」
トパーズの技で、トイフルは弱体化する。
「ルビー・ファイアー」
ルビーの技でとりあえずトイフルは浄化される。しかし、同じ方法はフェアーに通用せず逃げられてしまった。落ち込むルビーをトパーズは
「また優美さんも元気になったら、作戦を考えよう」
と言う。ルビーはそれに頷いた。
「ルビー・パワー」
ルビーの力で、倒れていた人々はとりあえず目を覚まし文化祭は無事に開始された。
文化祭では、結局音楽部の演奏は曲数を減らして実施された。後日、優美さんの家を遥花先輩に教えてもらい愛華と希実も一緒にお見舞いに行くと、優美さんはとても申し訳なさそうにしていた。
「私、中1の文化祭でもクラス合唱で伴奏頼まれたのに当日体調崩して、クラスのみんなにたくさん迷惑かけたの。もう私、部活にどう顔出せばいいか分からないわ」
優美さんはそう言って、泣き出す。愛華と希実がどう言葉をかければいいか分からずにいると、遥花先輩が
「中1のときも、優美は確かにみんなに迷惑をかけたかもしれないよ。でも私を含めクラスのみんなは元気になった優美を温かく迎えてくれたでしょ。もう体調が悪くなったことを悔やんだって仕方ないんだから。中学最後の文化祭に出ることができなくて残念だったかもしれないけど、一緒に勉強頑張って一緒の高校に行って高校生活楽しもうよ」
と、優美さんに言った。優美さんは泣くのをやめて、
「遥花、ありがとう」
と言った。