4章 優美の葛藤! 私が戦士?
4章 優美の葛藤! 私が戦士?
「俺は、戦士の息の根も止めろと言った。心の輝きももちろん重要だか、このままではまた邪魔をされてしまう。心の輝きを、後8400人分と一緒に戦士の息の根も止めるのだ」
大魔王は、フェアーに言った。フェアーは大魔王に頭を下げる事しかできなかった。
愛華が学校に着き、廊下を歩いていると少し前に見覚えのある先輩の姿を見つけた。愛華が声をかけると、一瞬ビクッとして愛華の方を先輩は振り返る。
「私、日野愛華と言います。先輩、もう体調は大丈夫なんですか?」
先輩は最初きょとんとしていたが、愛華の名前を聞いて微笑み、そして、
「昨日、助けてくれた1年生の方ね。昨日はどうもありがとうございました」
と言って先輩は愛華に向かって深々とお辞儀をする。
「そんな大したことしてませんから」
愛華は先輩にそう返すと、教室へと向かった。
そして放課後、演劇部の仮入部に参加するため、愛華は特別教室棟に向かった。少し前に、朝話した先輩が歩いている。
「こんにちは」
愛華が挨拶をすると、先輩も挨拶を返してくれた。
「これから部活ですか?」
と愛華が聞くと、
「そうよ」
と、先輩は答える。
「先輩、何部に入っているんですか? 私は、演劇部に入ろうかなと思っているんですけど…」
愛華の初めて先輩と打ち解けられる気がして、色々と聞いた。先輩は穏やかな笑顔で答えてくれる。
「私は、音楽部に入っているの。そういえば、自己紹介まだだったわね。私は、302クラスの水川優美。私、先輩って呼ばれるのあんまり好きじゃないから、先輩呼びはしなくて結構よ。後、演劇部は私の友達が部長を務めているの。後輩がたくさん入れば、きっと嬉しいと思うわ」
愛華は、先輩の話を聞いて、これからの部活が楽しみになった。先輩のことも、
「水川さんって呼んでもいいですか?」
と聞くと、先輩は頷いてくれた。部活は一緒じゃなくても、愛華は何か水川さんとつながりを持てる気がしていた。愛華が水川さんと別れ、演劇部の活動場所に向かおうとすると少し先で、何か大きな物音が聞こえてきた。愛華が窓から外を見ると、近くの公園でトイフルが出ているようだった。水川さんも、この状況に感づいているように見える。
愛華が急いで公園に向かおうとすると、
「今、外に出るのは危ないと思う。やめた方がいいわ」
そう言って水川さんは、愛華を引き止めた。そのとき、希実が愛華を呼びに特別教室棟へとやって来る。
「愛華、ドンケル王国が出たみたい。行こう!」
希実の言葉に先導され、愛華が公園へ向かおうとすると、水川さんに手を掴まれる。水川さんの体は、ほのかに青く光っていた。その光に反応し、クォーツが愛華の鞄から出てくる。
「私は、ジュエリー王国からやって来たクォーツクク。君はサファイアの戦士の力を持っているクク。愛華と希実と一緒に変身して、ドンケル王国と戦って欲しいクク」
水川さんは、突然の出来事に驚き、戸惑っているようだ。暫くして、
「ごめんなさい。私は戦えないわ。ただ、日野さんたちが危険な目に合わないか不安に思ったの」
と言って、その場を離れようとする。
「どうしてクク? これは君にしかできない事クク」
クォーツは説得しようとしたが、
「ごめんなさい。私、体弱いから、私なんかが変身して戦ったとしても、2人の足を引っ張るだけだわ」
そう言って、逃げるように水川さんは、去っていった。水川さんを包んでいたほのかな青い光は、いつの間にか消えていた。愛華と希実は水川さんの言葉に驚いたが、トイフルは倒さなければならない。
「愛華、公園に向かおう。戦わないと」
愛華は希実の言葉に頷き、一緒に公園に向かった。
「ルビーパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「トパーズパワーチャージ、シャイニング・フォルティッシモ」
「炎と愛の戦士、シャイニールビー」
「光と希望の戦士、シャイニートパーズ」
公園に着くと、トイフルが暴れ、その傍にはフェアーがいた。心の輝きを奪われた人々も近くに倒れている。
「心の輝きだけでは、大魔王様は満足されない。お前たちの息の根も止めてやる!」
トイフルと一緒にフェアーも襲いかかってきた。
「ルビー、私がフェアーの動きを抑えるから、技を発動してトイフルをまずは倒して」
トパーズの言葉にルビーは頷き、
ルビーは、コンパクトに力を込めた。
「ルビー・ファイアー」
ルビーの力で、トイフルは浄化される。トパーズもコンパクトに力を込め、
「トパーズ・サンダー」
をフェアーに向かって発動し、フェアーに命中させる。フェアーは、少しダメージを受けたようだった。しかし、そこで逃げられてしまった。トパーズはがっかりしたが、今度は絶対に倒したいと思い、変身を解除した。一方、ルビーは
「ルビー・パワー」
と唱え、愛の力で心の輝きを奪われた人々に元気を与え、変身を解除した。
優美は家に着くと、自分の部屋で自問自答を繰り返す。久しぶりに走ったことで、息が上がって苦しく感じる。優美は激しく咳込み、ベッドに横になった。そんな優美の様子を心配して、お母さんが優美の部屋に来る。お母さんに心配させまいと、優美は
「大丈夫だから…」
と言ってその場をやり過ごした。お母さんは心配そうな顔つきだったが、しばらくして優美の部屋から出ていった。ベッドに横たわりながら、優美はさっき自分の体が青い光に包まれたときのことを思い出す。あのとき、自分の体とは思えないくらい体に力が溢れていた気がした。けれど、途中で倒れたら2人に迷惑がかかるかもしれない。そう思うと、優美はまだ戦士になる決断ができなかった。